第96話 マッチとピーナッツ
————あれ、この感触は?
うぬぬぬ?
勃起?
慌てて起き上がってパンツ脱いで股間を視認すると……。
なんか通常は隠れてるはずの場所が……!?
えぇーーーっ?
何これ、キモっ。
普通は包皮で保護されていて皮をお腹の方に引っ張り上げないと出てこない部分が、何もしてないのにちょこんと前に飛び出している……。
しかし◯んちんというには小さすぎるよなぁ。でもよく観察するとどう見てもこれはそのミニチュア版だ。
例えるなら小ぶりのピーナッツから燃え残りのマッチ棒へのメタモルフォーゼ……。
いやいくらなんでも燃え残りのマッチ棒ではヒョロすぎる。小指の先くらい?
しかも剥けてる。男だった時は剥けてなかったのに……。
男としてはマイクロサイズ。だが女としてはデカすぎだろこれ。
帯に短し襷に長しとはこのことか! 違うよね、知ってる。
痛し痒しとはこのこ……違う! 痛いけど痒くないし。
それにしてもこれは何だろうか。
その下の方は今まで通りだから、女性器がなくなったわけではない。
だとするとこれは女物ということになるのかな?
……しかし形状的にというか状態的には男物っぽい……。
これが流行りのユニセックスものか!
…………。
はいはい。違うよね。知ってますよ……服の話じゃないことくらいね。
取り敢えず親指と人差し指で摘める程度のサイズなので、何も考えずに摘んでみたらビリっと仰け反りそうなくらい強い刺激が走った。
「あいたっ」
そう言えば、女子化しかけていたときにもこんなことがあったな……。
成長期のおっぱいを摘んで痛い思いをしたんだった! やることが成長してねーー。
興奮してない状態だと直に触ると結構辛い刺激なのだ。
この痛みは紛れもなく、女の子のじゃん……。
がーーーん。
男子だったらでかい奴はやたら自慢げだったけど、女子でこれは恥ずいんじゃないのかな……。
華名咲家の女性陣がお風呂で威風堂々としていられるのも、基本これは隠れてる状態だからからなんじゃないか?
こんなひょっこりはんな状態ではいくら華名咲の女と言えどさすがにないわなぁ……。
ないわぁ……このひょっこりはんは。
取り敢えずパンツを履いて服を着て下に降りてから叔母さんに相談してみるか。そう思って歩き出すと、ひょっこりはんが直にパンツに擦れて辛い!
く……。
何これ歩けないじゃん……。
久々にきたなー、どーするオレ!? 的な展開。
ちょ……これは辛い……。
この状況で刺激されて気持ちよくなるとか全然ないから。足を踏み出すたびにビリッビリッてシャレにならん刺激が走る。
取り敢えず叔母さんに電話して事情を話し、上にきてもらうようにお願いした。
叔母さんはすぐに駆けつけてくれて、心配した秋菜も一緒に来てくれた。
「大丈夫、夏葉ちゃん!? それで、どんな状態なの?」
以前女子化した時の経緯を説明して、今回ちょっと似たシチュエーションで心配になって確認したら今の状態になっており、露出しているためパンツに擦れて痛いのだと詳細を説明する。
内容が内容だけに、説明しながらもなんか恥ずかしいが、これは間抜けかもしれないが真面目な話なのだ。
「どういうことなの? 夏葉ちゃんがまた男の子に戻っちゃうの!?」
秋菜が答えを求めているが、わたしだって同じ疑問がぐるぐるしてるっての。
答えを知ってる人がいたらこっちが聞きたいわ。
「ちょちょちょっ。どんなことになってんのよ、見せて見せて!」
おいおい……こいつはただの興味本位かよ。
しかし叔母さんは真面目な顔で取り敢えず見せてみろと言う。
えぇ〜〜〜っ、こんなとこ見せるとか普通ないでしょ。
まあ秋菜と叔母さんだからな……。この人たちは普通じゃないのはよく知ってるが……。
さすがに恥ずかしいけどこの状況だし、この二人だからなぁ。言い出したら聞かないし……。
腹を括ってパンツを脱いで状況を見てもらう。
「うっわ、おっきい。わたしいくら興奮してもこんなになったことないわ。ママある?」
「ないない。興奮とかの問題じゃないわよこれは。さすがに普通の状況じゃないわねぇ……」
ってこの親子。そのやりとり、普通の状況じゃないのはまずはあんたらの会話じゃね?
こんなもんを見られてる状況も普通じゃないが。
そもそもこれ、興奮しておっきくなってるわけじゃないからね!?
二人は珍妙に……でもしげしげと眺めている。さすがにそこまで観察されるとは思ってなかったから辛いわ。
「夏葉ちゃん、これ触ってみてもいい?」
って、おいっ!
「ダメダメ! 絶対無理! 痛いからダメだよ! これフリじゃないからマジでダメだよ!」
お前なぁ、自分が言ってることを冷静になって客観的に考えてみろよ。
「あ、やっぱ痛いんだ」
あったりまえだろーーーがっ。
自分のひん剥いていきなり触ってみろ。
って、一説によれば刺激に慣れてる人の場合はそうでもないらしいけど。
よそ様の事情は知らないけど、とにかくわたしの場合はいきなり直の刺激は痛いのだ。
「困ったわねぇ。とにかく病院に行って涼音ちゃんに相談してみましょう」
「うん、でもこれパンツに擦れて痛くて歩けないんだよ、真面目な話」
「そうよねぇ……どうしたらいいかしらねぇ……」
叔母さんにもいい案が浮かばないようで困り果ててしまった。
もし客観的に見てたらバカバカしく見えそうだが本人たちは意外に必死だ。
「あぁ、絆創膏貼ったら?」
秋菜のアイディアだ。
「なるほど!」
改めて強調しておくが、アホ丸出しに見えるとしても本人はいたって真剣だ。
ということで早速試してみたのだが、微妙にサイズ的に収まりきれない。
ていうかなんか絆創膏エロくね?
どうにか挟み込んで絆創膏で留めるとかあれこれ試してみたが、結局絆創膏ではうまく収まらず、最終的にはガーゼを当ててテープで押さえるという方向で収束した。
しつこいようだが我々はいたって真面目だが、真面目であるほど客観的にはおかしなことってよくあるものだ。恥ずかしいけど仕方がないと自分に言い聞かせるよりない。
「うん。……うん、大丈夫大丈夫。これなら歩ける」
そして叔母さんの運転で病院へ。
考えたらこれって、当然涼音先生にあそこ晒すんだよね……。
医者とは言えまた股を晒すのか……しかもこんなことになっちゃってるのを……。
取り敢えず男に戻れるのかどうかとかそんなことより、差し当たっての心配で頭がいっぱいなわたしだった。
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