八月のワンダーラスト

市井一佳

1.

 券売機にICカードを押し込んで、続けて一万円札を投入する。

 タッチパネルに表示された五百円から一万円までのチャージ金額の選択肢から、迷うことなく五十嵐は一万円を選んだ。

 券売機から吐き出されたICカードを再び定期入れにしまって、改札の向こう側にある電光掲示板へ視線を投げる。

 タイミングよく上りの電車が到着するところだった。数日分の着替えや洗面用具の類が詰め込まれて膨れ上がったバックパックを背負い直し、チャージしたばかりのICカードを改札にかざす。

 開いた改札の扉から、どこか別の世界に繋がっていればいいのに。そう思いながら――そんな考えを馬鹿馬鹿しいと分かっていながら、五十嵐は改札を通り抜けた。



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