3. 修羅場
役鬼の示した方向に鬼畜を走らせる。足下に目を
近付いてみると、一群の中には
邪鬼は皆、白い袋を肩に担ぎ、袋口に手を突っ込んでは何やら赤い物を地上にバラ撒いていた。
もし邪鬼の服装が赤かったら、サンタクロースの大群がプレゼントを子供達に投げ与えているように見えただろう。実際は禍々しい光景であったが・・・・・・。
「あれは何を遣っているの?」
『うん。あれも刑の一つなんじゃ。
まずは2鬼に挨拶じゃ』
怠鬼は邪鬼の群れの中を真っ直ぐに突っ切って行く。邪鬼達は鬼畜を動かし、怠鬼に道を空けた。
『やあ。
そう声を掛け、続いて猛の事を2鬼に紹介した。
一方の
目を惹くのは
2鬼共、馬鹿皮の腰布だけを身に着け、やはり素足だった。此れが地獄の鬼の標準スタイルらしい。
『邪鬼の作業は続けておいて構わんから、此の猛にお前さん達の役務を説明して遣ってはくれんかのう』
怠鬼の依頼に2鬼は顔を見合わせた。どっちが説明するかをアイサインで相談している。
『説明も何も・・・・・・。足下を見れば一目瞭然だろう』
地表の様子は使役の刑場と同じだったので、此処までの移動中も真面目に見ていなかった。
邪鬼が捲き散らしている赤く小さな何かを
そして、咎人達は奪った物を口に入れると一様に悶絶していた。
「・・・・・・あの赤い物は何ですか?」
『
「此の実は地獄に生えているのですか?」
『ああ、そうじゃよ。後で見学するが、
猛の股の間から怠鬼が説明する。
「地獄でも食物を栽培するのですね。他にも何か栽培しているのですか?」
『他には栽培しておらんよ。だが、辛実を食物と言うかどうかは疑問じゃがのう』
「でも、あの通り。咎人達が狂ったように食べていますよねえ?」
『お前さん、忘れたのかね? 亡者は食べる必要が無いんじゃ』
「それでは、あれは?」
『刑の一つじゃよ。誰も好き好んで辛実を
「仕方無く?」
猛の呟きを耳にした
『俺様が咎人達を空腹で空腹で堪らないと言う風に追い込んでいるのさ。何かを口に入れずには居られない。そう言う欲望を掻き立てているのだ。
辛過ぎて喉を焼く。だが、咀嚼して飲み込んでしまうと、また次の辛実を口に入れずには居られない。
そう追い込むのが俺様の役務だ』
「此処は未だ、使役の刑場のようですけれど・・・・・・」
猛の股の間から怠鬼が回答する。
『そうじゃよ。此処は使役の刑場じゃ。
此の
軽度の咎人の全てが順繰りに
「そうすると、咎人は使役だけじゃなくて、辛食の刑も合わせて受けるんですね?」
『そうじゃよ。あと一つ。腐臭の刑も有るがの』
「腐臭の刑?」
『ああ。そう言えば、
『俺達も近付かぬようにしているから、詳しくは分からぬが・・・・・・、多分あっちの方だ』
また
小さな雲に近付くにつれ、雲から遠ざかる方向に咎人達が必死で逃げているのが分かる。小さな雲に500m前後まで近付くと、今後は逆に、咎人達が硬直して倒れていた。中心部に行くほど倒れた咎人の数が増える。
更に近付くと、何かが腐った様な、
「此の臭いは何?」
猛は鼻声で怠鬼に質問した。口で息をしているので、長いセリフは話せない。
『
怠鬼も短く答える。
小さな雲の間近まで近付くと、地表に、黒いフード付きマントを着た老婆の姿を認めた。老婆の脇にはバケツ位の
猛と怠鬼の乗る鬼畜が、ブルルと鳴き声を上げて老婆への接近を嫌がり始め、最後はヒヒーンと
『引き返すぞ。これ以上の接近は無理じゃ』
怠鬼は鬼畜の向きを変える。老婆から離れるに従って異臭は弱くなった。咎人達の硬直する円の外を出た処で、猛は怠鬼に質問した。もう、普段通り鼻で呼吸できる。
「あれは何だったの?」
『あそこにいた
「あれだけ臭いからねえ~。鬼畜だって厭がっていたものね」
『だがな、お前さん。咎人達は、もっと臭い思いをしているんじゃよ。
ワシら鬼達が感じる臭さはかなり減じられておるんじゃ』
「じゃあ、俺の場合は?」
『
もし、咎人達と同じだけ感じていたら、お前さん、既に気絶して落馬しておるはずじゃ』
「でも、何故、逃げ出さずに気絶する咎人が多いんだろう。実際、逃げている咎人も多かったよねえ?」
『臭いに気付いた時には既に遅いんじゃ。逃げ出した咎人達は、臭いに気付いたから逃げたのではなくて、バタバタと倒れ始める咎人の姿を見て逃げ出しているんじゃよ。
「うん」
『金斗雲から降りた
掻き混ぜれば、掻き混ぜるほど、臭いは広がる。臭いに捕まった途端に身体が硬直する。
ああ、其れとなあ。咎人達は気絶しておらんのじゃ。硬直する身体で腐臭に悶えておるのじゃよ。気絶したら刑の意味が無くなってしまうじゃろ?。
だから、腐臭の刑は、軽度の咎人だけに執行しておるんじゃ。中度以上に性根が曲がっておると、気絶してしまうからの』
「
『そうじゃ』
「怠鬼さんも金斗雲に乗れるの?」
『ああ、乗れるさ。でもな、金斗雲に乗ると雲に隠れてしまって、下が見えんのじゃよ』
「それでも、
『さっきも見たじゃろ。
「なるほどねえ。でも、金斗雲が近付いて来たら、咎人達も気付くんじゃないの?」
『地面を掘っている咎人達は下を向いておる。
上を向いたら、使役の刑をサボっている事になるから、見回りに来た邪鬼に鞭打たれてしまう。だから、
まあ、以上が軽度の刑場じゃ。青鬼が見ていた大きな箱は、此の刑場を意味していたんじゃ。
次は、中度の刑場に向かうぞ』
怠鬼は魔山に背を向け、遠ざかる方向に鬼畜を向かわせた。
ずうっと鬼畜で駆け続けていると、足下で使役の刑に服役していた咎人達の数が徐々に疎らとなって来た。前方に黒い雨雲が見え始める。雲間に稲妻がピカリと光る。
「怠鬼さん。前の方に見えるのは雨雲だよね? やっぱり、地獄でも雨は降るみたいだね」
『いや、あれは降っているんじゃない。降らせているんじゃ』
「
『
それに、遠目に見ても分からんがの。相棒の
数多降る雹に打ち突けられて、咎人達は痛い目に遭うておるよ。当然ながら、凍えるくらいに寒い。だから、雹の打ちつける痛みは相当なもののはずじゃ』
「こんな格好で、俺は大丈夫かな?」
ジーンズにTシャツ姿の我が身を思い出し、猛は怠鬼に確かめた。
『大丈夫じゃ。お前さんは咎人じゃないからのう。さっきの
怠鬼は両手を広げて木綿か麻の服地を裁縫した作務衣を見せ、防寒具として用を為さない仕様を強調した。因みに、怠鬼の下半身は猿股姿である。作務衣と猿股の組み合わせには少々違和感を覚えないでもない。
「そう言えば、気になっていたんだけど。怠鬼さんの服って何処で仕入れるの? 地獄でも、服の生地が手に入るの?」
『そんな物は手に入らん。じゃがの、ワシも女じゃ。服くらいは身に着けんとのう』
「じゃあ、
『
「土産物?」
『ああ。
たまに魔山に参内する時にな、三途の川の渡河人が亡者から取り上げた着物を、土産物替わりにな、持って来てくれるんじゃよ』
「フ~ン。一応、森が有るんだね」
『ああ、有るぞ。最後に
『高度を上げるぞ。どうせ、
雨雲の上は、いつもの地獄の気候である。寒暖も感じず、湿度も感じない。太陽も上がっていないのに、なんだか明るい。曇りの日の日昼を思わせる光景だ。
雲の上には鬼畜に乗った
そして、2鬼の周辺には、ペッタンコの白い袋を鞍の前に掛け、手持無沙汰にしている邪鬼を乗せた鬼畜が数百頭も群れていた。
『やあ、御二人さん。いつもながら、精が出るのう!』
怠鬼が
身体には馬鹿の皮で拵えた腰布しか身に着けていないが、鯉幟を思わせる白い無地の袋の両端を両手で握り、首回りにフワフワと漂わせている。
一方の
此れも
裾の左右にはスリットが入っているので、鬼畜に跨っていても支障無い。スリットから覗く両脚はほっそりと伸びていて、裸足のまま
『此の
此の小童にお前さん達の刑場を見せたいんじゃがのう。切りの良い処で、雲の下を見せて遣ってはくれんか』
右手で掴《つか)んでいた白い袋帯の端を少し緩めると、袋口を雲の方に向ける。袋口からは大風が吹き出し、雲を周囲に押し寄せて雲間を作った。
獰猛なのは顔付きだけで、親切な鬼らしい。ただ、
雲間から地表を覗くと、両手を身体に巻き付け、地団太を踏んで歯をガチガチ言わせた咎人達が、
だが、何かの植物の実を必死になって摘み取ろうとしているのが分かった。
「何か、摘み取ろうとしているようだけど・・・・・・」
『あれはな、辛実じゃよ。
「辛実!? でも、赤くはないね、緑色みたい」
『ああ、未だ天日干ししておらんからの』
「こんな場所で辛実を栽培しているんだね。辛実も
『寒い処で打たれると、辛味が増すんじゃよ』
「咎人達が収穫した辛実は、
『邪鬼達が白い袋を持って待機しておるじゃろ。
咎人達の収穫した辛実が山となれば、
咎人達は袋の中に辛実を詰め込むんじゃな』
「それじゃあ、袋に詰める時だけは、雹に打たれなくても済むんだね」
『いやいや、邪鬼が雲の上に戻ったら、風雨は再開じゃ』
「雹に打たれながら、袋詰め?」
『そうじゃよ。極寒の刑の最中じゃからな』
説明を聴いている猛の感覚も麻痺して来ている。
咎人達を可哀そうだ――とか、気の毒だ――とは考えなくなっていた。ただ、徹底しているな――と言う感想を抱くのみである。
『それでは、次なる刑場に行こうかの。
極寒の刑場を離れ、2鬼の耳に声が届かない場所まで離れた処で、猛は怠鬼に質問した。
「ねえねえ。
『そうさのう。だがのっ。あの風雨の音に掻き消されて、中々言葉は交せられんよ』
「もしかして、
『誰に?』
「人間達に」
『どうかのう。ワシは知らん。
じゃが、現世に行った事は有るからのう。其の時は、そう呼ばれていたかもしれん』
「やっぱり昔、現世に行った事が有るんだ!」
『
「鬼の皆さんって、現世に行った事が有るんだねえ。だから、昔話に登場するんだ」
『そうかもしれんのう。人間の昔話の事は、
「怠鬼さんも、現世に行った経験が有るの?」
『ワシは無い』
「何故?」
『ワシは閻魔様にお仕えするのが役務じゃからな』
「フ~ン。行ける鬼と行けない鬼がいるんだ。行ける鬼は、最近も現世に行っているの?」
『最近は聴かんのう。みんな、忙しいからのう』
「忙しい?」
『ああ。亡者の数が増えて来たからのう。人間共、現世での数を増やしておるじゃろう?
だから、ワシら、大忙しじゃ。
他にも問題は生じておるが、詳しくは学鬼《がっき)に解説してもらおう。ワシじゃ無理じゃ』
極寒の刑場の次に怠鬼が案内した場所は、
2鬼とも猛よりは身長が高そうだが、筋肉隆々ではない。一般的な中肉の体付きなので、大して威圧感は感じない。ただ、
地表では、咎人達が暑さでフラフラになりながら、極寒の刑場で収穫された緑色の辛実を地表に蒔いている。別の場所では、赤く乾燥した辛実を拾い、白い袋に詰める作業をしていた。
――死んだ身になっても未だ汗が出るのだろうか?
額を片手で拭い、天を見上げる咎人が居る。だが、直ぐに邪鬼が近くまで降りて来て、鬼畜の馬上から咎人を鞭打つのだ。
怠鬼の説明に依ると、
団子鼻の下に白い上腕骨を括り付けたならば、幼児アニメに登場する南国の人食い人種に似ている事だろう。肌の色は黒く、身体は腹の辺りがデップリとした肥満体型。馬鹿の皮の腰布を巻いただけの格好だ。
此の2鬼の足下には、気色の悪い光景が広がっていた。人間の背丈よりも深いプールが幾つも掘られ、其の中では無数の黒い存在が
プールサイドの崖を
最初、プール内で蠢く黒いゲル状の物体の正体が分からず、タールか何かだと勘違いした猛は其の真偽を問うた。すると、ニヤリと笑みを浮かべた
『近寄って、直に見るが良い。遠目では分からんだろう?』
怠鬼が鬼畜をプールの黒面まで近付ける。
黒面の間近に迫ると、猛は鳥肌を立て、ひゃ~っと情けない叫び声を上げた。猛の悲鳴を聞いた
プールの中で蠢いていたのは、子供の腕ほどの大きさの蟲だった。黒光りのするムカデの如き蟲で、無数の足をワサワサと動かしている。
蟲の群れの中に身を埋めるくらいなら、蛇の群れの中に埋まった方が未だマシかもしれなかった。無数の蟲が咎人の身体を這いずり回り、頭に這い上がっては、背中に這い降りている。
怠鬼は鬼畜を上空に戻し、
『あの溜りの中に蠢く蟲達は、此の
『聴くも何も。俺が命令するのは唯一つ。咎人達に絡み付け、の一言だけどな』
『まあ、お前さんも反応したが、人間と言う者は蟲を毛嫌いするみたいじゃからの。あの溜りの中に浮かんでいるのは厭な事じゃろうて。
ただ、気色は悪いじゃろうが、それだけなら痛みは伴わん。性根を矯正するには、ちいとパンチが足らんのじゃよ。其処で、
怠鬼は右手で
「
『私の役務ですか? 私の役務は、咎人達に幻覚を見せる事なんです。怠鬼さんが指摘した通り、蟲を這わせるだけでは痛みを伴いません。
ですからね。咎人達に、蟲が皮膚を食い破り、臓物を引き裂いている様な幻覚を起こさせるのですよ。咎人に依っては真に迫る幻覚に勘違いして、身体から血を流し始める事もあります』
「やっぱり、幻覚でも痛みを感じるのですか?」
『感じるようですよ。性根が柔らかくなりますからね』
「性根が柔らかくなる?」
『ああ、其れは最後の最後に魔山に戻って、
『此処までが中度の刑場じゃ。極寒、
「咎人達は、どう言うルールで仕分けられるの? まさか、本人の希望を聞くわけじゃないよね?』
『そんな生易しい事は地獄では有り得んよ。
大まかに言うとな。寒い所で現世を生きておった亡者は、暑渇の刑場。逆に暑い所で現世を生きておった亡者は、極寒の刑場と言う風にな、慣れていない刑場に連れて行くんじゃ」
「それじゃあ、
『蟲を見慣れていない者が連れて行かれるんじゃ。もっとも、あの蟲にソックリの虫は現世にも
「そうすると、先進国に住んでいた咎人が
『先進国と言う言葉の意味が分からんが、お前さんの言う通りなんじゃろう」
「ところで、中度の刑場で働いている鬼は、全部で6人なの? 各刑場に2人ずつ居たからね』
『自分の担当する刑場を持った鬼と言う意味ならば、お前さんの言う通り、6鬼じゃ』
「と言う事は、担当外の鬼も居るって言う事?」
『ああ、
「うん。折角だから」
猛の返事を聴いた怠鬼は、鬼畜を魔山とは反対の方向に巡らせた。ピシャリと手綱を鳴らす。足下を
地平線の彼方に縦縞の線が無数に見え始める。眼下では今まで通り過ぎていた黒いプールが無くなって、再び火星表面の様な赤茶けた岩や土、砂ばかりの地表が戻って来た。
『そろそろじゃよ』
と、怠鬼が馬上で言う。
更に進むと、小振りのプールが幾つも見え始めた。
襤褸布の一端を握る色白の腕の表面には、黒いシミが幾つも浮かんでいた。地獄の鬼ならば死ぬ事は無いのだろうけれど、此の老人の健康状態は大丈夫なのだろうか?――と、猛は心配になった。
そんな猛の第一印象を気にする事無く、怠鬼は鬼畜の馬上から陽気に、
『よお、
と、右手を挙げて、
『ああ、御陰様でなあ。見ての通り、ピンピンしておるわい』
と、
怠鬼は
『此の小童に、お前さんの役務を説明して欲しいんじゃよ』
『ああ、構わんよ。猛と言ったな。お前は、もう、
「はい」
『じゃあ、話は簡単じゃ。
此処に並んでいるプールではな、あの蟲を育てておるんじゃ。大きくなったら、
どうじゃ、プールに近寄って、中を覗いてみるか?』
自分の役務に誇りを持っている鬼の気分を害してはマズイ――と慌てた猛は、自分の質問に喜んで答えた青鬼の反応を思い出し、
「それよりも、
と質問した。見るのは厭だが、質問ならば幾つも有る。
質問された
『蟲は何も食べんよ。百聞は一見に如かず、じゃ。向こうの方に咎人達が点々と見えるだろう?』
咎人は皆、樽を持っている。樽に入った何かをプールの中に注いでいるようだった。
「あれは?」
『三途の川の水を溜りの中に注いでおるのじゃ』
「蟲は水膨れで大きくなるのですか?」
『まあ、水膨れと言うのが
「三途の川は此処から近いのですか?」
『何を以って近いと言うかだが、魔山に比べれば遥かに近いな』
「咎人達は何日くらい掛けて、三途の川から水を運んで来るのですか?」
『何日? 閻魔様が
其れは閻魔様次第じゃから、ワシには分からんぞ』
疫鬼《えっき)の回答の意味を猛は理解できなかった。
でも、鬼達の回答を理解できない事には慣れ始めていたので、素直に質問を変えた。
「水を運ぶ刑は軽度なんですか? それとも、中度なんですか?」
『軽度じゃな。
咎人の群れとは違う方向に、猛は甕の大群を見付けた。
「あの甕に水を貯めておくんですか? 咎人達の運んで来る水が間に合わない時に備えて」
『いいや。あれらの甕には蟲の身体から沁み出た粘液を入れておる』
「粘液?」
『ああ。小さい時の蟲は体表から粘液を分泌するんじゃよ。其れを貯めておる』
「粘液を貯めて、
『
猛は「えっ!?」と馬上で
「近くに行けば、腐臭が凄いとか?」
『いやいや、大丈夫だ。甕には蓋をしておるからな』
「そのう、蟲の粘液は臭くない?」
『ああ、分泌されたばかりの粘液は臭くないぞ。
甕の中で発酵させる事で初めて、腐臭を発するようになるんじゃ』
「もし、誰かが甕を倒したら?」
『悲惨な事になるな。
咎人達は硬直してバタバタと倒れるじゃろう。鬼畜も一目散に逃げてしまうな』
「危険と隣り合わせの役務場なんですね」
『まあ、そう言う事になるかな』
得意気な表情を浮かべた
『最後にしようと思っていたが、此処まで来たら、先に
あの三途の川沿いの森の中に
地平線に見える縦縞の線は、極寒の刑場や
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