第1386話 青も赤も通れず……

「機関銃を乱射して撃ち落とそうってのか?だが……」 


八咫はそう言うと飛翔しながら回避体制を取るが、その機関銃から放たれたのは弾丸ではなく雷撃であった。


「おわっと!!弾丸じゃなくて雷撃を放ってくるとはな、だが……」


雷撃を回避しつつ八咫は羽を光らせ


「黒羽の閃光!!」


と言って羽から黒い妖術を放って兵器を攻撃しようとする。

だが其の妖術も又、兵器の表面に直撃すると同時に霧散してしまう。


「何っ!?今のは……」

「どういう事!?こいつは青制御の兵器じゃ……」


先程魔術を霧散させた兵器が今度は妖術を霧散させる、その光景に八咫と空狐は困惑した声を上げる。

其の困惑の鋤を付かれたのか、兵器は八咫目掛けて今度こそ機関銃を放ち、八咫はそれを回避しきれずにその身で受けてしまう。


「つっ、被弾した傷は小せえけどよ……」


八咫がこう呟くのは攻撃を受けたことそのものに対してではない、それによってバランスを崩し、降下してしまっている事に対して焦燥を覚えているのだ。


「ちっ、せめて気だけでもこっちに向けられりゃあ……」


モイスはそう言うと銃弾を再び兵器に向けて撃つが、最早兵器は意に介さずと言わんばかりに八咫に攻撃を集中させる。


「ちっ、仕方ねえ、黒羽の緩衝!!」


八咫はそう言うと羽に妖力を込めて背面に巨大化させ、地面に叩きつけられる衝撃を可能な限り干渉する。

だが叩きつけられた衝撃音は部屋に響き、砂煙も立ち込める。

其の煙で対象を見失ったのか八咫への攻撃は収まり、コンスタリオが真っ先に八咫の元に駆け寄る。


「大丈夫なの?貴方……」

「ああ、この位でくたばる様な軟な存在じゃねえぜ」


心配する声をかけるコンスタリオに対し八咫は直様立ち上がって体制を立て直す。

先程の衝撃を緩衝した事もあり、どうやら本当にダメージは軽微のようだ。


「それは何よりだが、あの兵器は一体……」

「魔術も妖術も霧散してくるとなると、赤制御と青制御の両方が組み込まれているの?」

「先程のシレットの攻撃は兵器の右側、八咫の攻撃は兵器の左側に当たっていた、もし左右で違う制御装置を組み込んでいるのであればあるいは考えられなくはない。

そしてもう一つ考えられるのは状況に応じて制御装置を切り替えているというケース」

「スターの言いてえ事は分かるが、兵器にそんな事が……」

「いえ、其の為にアンナースを組み込んでいる、こう続けたいのでしょう?」


シレットとモイスの困惑について星峰が何時もの分析を行い、それについて生じた疑問にコンスタリオが言葉を差し挟む。

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