第1333話 忌わしき記録

「今まで知らなかったデータが次々と発覚していますね……」

「ブントがこの施設について血眼になるのも納得だな、それにこのデータ、もし地上でも生産出来るようになれば一方がもう一方を圧倒するだけの軍事力を手にする事は容易だ。

そう考えるとブントの目的から考えてそれを阻止したいが為にここのデータを外に送信していなかったとも考えられる」

「何れにしてもこのデータを押さえることが出来たのは大きいね。

 ブントとの決戦前にこのデータが奴等の手に渡っていたら大変な驚異になっていた所だよ。

否、まだ安心するのは早いかも知れないけどね……」


星峰が入手した様々なデータを見て一同が唖然とする一方、このデータがブントに渡らなかった事に何処か安堵する一面もあった。

だがその安堵は続いて星峰が調べたデータにより直様消える事となる。


「続いてのデータはこのプラントの構造解説ね……だけどこれは……」


星峰が見つけ、表示したプラントの地図自体は極ありふれた物であった。

だが生産された兵器の終着点に何か良く分からない物が表示されているのである。


「生産された兵器が最終的に何処に向かっているのでしょうか?生産された兵器の終着点が明確に記載されていないという事はつまり……」

「そこに何が有るのか明記したくない、或いはこのデータを記録した本人も分かっていないのか、何れにしても嫌な予感がするわね」


岬が不安な声を上げると星峰も其の予感に同意する。

兵器の終着点が不明という事が星峰の、否一同の脳裏に嫌な予感を過らせた事は想像に難くない話であった。


「生産された兵器が何処に送られているのか、恐らくは……」


涙名がそう告げると天之御は


「それは直接向かって調べるしかないね、それよりも今は星峰が調べてくれたデータ収集に専念しよう」


と良い、今は全神経をデータに対して向けるべきであると促す。

其の言葉を受け、一同は再び画面に視線を向ける。


「待ってて、直ぐに次のデータを表示するわ。

続いて調べるべきなのは……」


星峰はそう告げると続いて更に別の場所のデータを表示し始める。

すると今度は人造生物の生産記録らしきデータが表示される。


「星峰……これって……」

「ええ、忌々しい記録の部分を表示してしまったようね……だけどこれから目を背ける訳には行かないわ」


天之御ですら思わず動揺してしまう程のデータが表示されているようでは有るが、星峰はこう口にする事でデータから注意を逸らさないように告げる。

だがこの発言は単に他の面々に向けたものではなく、自分自身に対して向けて居る言葉でもあった。

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