第1167話 呼び方の意味
「それで、見分け方はどうすれば良いのかしら?」
話が脇道に逸れそうになった事を察したのか、コンスタリオは直様話を元の路線に戻す。
「分かった、教えるよ。
空狐」
「分かりました、天之御殿下」
コンスタリオの発言を受け、天之御と空狐はこうしたやり取りを行う。
それを見たモイスとシレットは
「それで、其の見分け方は何なんだ?」
「今のやり取りからして周囲の面々も分かっているのでしょう、それを教えてもらわないと……」
と言いかけるがコンスタリオだけは其のやり取りを見て違った表情を浮かべていた。
「……成程ね、そういう事」
何処か納得したような、何か合点が言ったような、そう思わせる表情であった。
「何がそういうことなんです?今のやり取りでは……」
シレットがコンスタリオに対して意見をしようとするとコンスタリオは
「今のやり取りの中に見分ける答えはあったわ。
魔王陣営の兵士は魔王に対して殿下という敬称を付けており、ブント側の兵士は魔王に対して様という敬称を付けている、それが答えなのでしょう」
と先に答える。
其の答えを聞いた天之御は
「其の通りだよ、魔王陣営の兵士は父の代から魔王に対してつける敬称をブントが居ない所では変えているんだ」
とコンスタリオの仮説が正しい事を改めて告げる。
「以前から気になってはいたのよね、兵士が様付けで呼んでいるのに貴方の周囲に居るスターを含めた面々は殿下と呼んでいる。
まあ、スターは殿下と呼んでいない事もあるようだけど。
それが単なる兵士の癖なのか、それとも何か意味があるのかどうかは分からなかったけど、そういう狙いがあったとはね」
こうしてコンスタリオは前々から疑問に思っていた事を告げ、天之御に対する呼び方の違いの意味が解き明かされる。
「殿下と呼んでいるか、様と呼んでいるのか、其の点の違いがこんな所にあったとはね、流石に気付かなかったわ。
最も、簡単に気付かれてしまうのはブントにバレるという観点から問題なのでしょうけど」
「そういう事、それにブントと敵対するという事は生半可な覚悟では出来ない事でもある、だから兵士達が僕の事を殿下と呼ぶのはそう簡単に出来る事じゃない」
「ええ、私も身内にブントが紛れ込んでいなければ殿下のお覚悟に気づけなかったかもしれないわ」
謎が溶けた事に気を良くしたのか、何時にも増してシレットが饒舌になる。
だが最後の空狐の声を聞いた瞬間、其の顔が少し歪になるのを星峰は見逃さなかった。
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