第1146話 空狐の機転
一方その頃、西大陸で略孤軍奮闘に近い形で兵器と戦っていた空狐も無情に数を増やしていく兵器に焦燥感を募らせていた。
「くっ、このまま数で押されては何れは……せめて兵士を後退させる鋤だけでも作る事が出来れば……」
そう思って兵士達の集まっている方角へと目を向ける空狐、だがその瞬間起こった事を空狐は見逃さなかった。
集まっている兵士達の背後から新たに兵器が出現したのである。
「兵士の背後から兵器が出現した!?あそこに兵器の出口があるって事なの!?」
空狐がそう呟き、その真偽を確認する為に兵士達の奥へと目をやると其処には明らかに階段の様な物が見える穴が存在していた。
更に其処から兵器が出現し、その穴が兵器の出現口になっているのは最早疑い様の無い事実であった。
「兵器が出現しているのが確認出来た以上、あそこを開けておく意味はないわね……いえ、よく考えてみれば当然ね。
ここにいるブントの部隊は恐らくあの兵器達と合流する為に来ていた筈、となるとその兵器が攻撃してきたというのであれば最も被害が大きい場所の近くに出入りしている筈、もう少し早く気付くべきだったわ……」
自身の考えの至らなさに若干の自己嫌悪と苛立ちを抱きつつも空狐は同時に一縷の望みが自分の中に沸き立つのも感じていた。
そしてそれに突き動かされていると言わんばかりにその方向へと駆け出していき
「狐妖術……白色の閃光!!」
と言ってその穴の周囲に白い球体を出現させて爆発させ、その穴を破壊して出口を塞ぐ。だがその崩れた地面の下からガタガタと音が鳴り、兵器が尚も出現しようとしているのはその音から考えても明らかであった。
だがそれは空狐にも予想出来た事であり、それを見越した上で空狐は更に
「狐妖術……蒼き天輪!!」
と言ってその穴の上に蒼い円を出現させ、その穴を塞ぐ。
するとその穴から聞こえていたガタガタという音が一転して静かになる、いや、静まり返ると言った方が良いのかもしれない。
「空狐様、一体何を?」
「今それを説明している時間はないわ、取り敢えず敵の増援がこれ以上増えるのは防げた、今の内に離脱するわよ。
今ここに残存している敵位なら掃討出来るでしょう!!」
兵士からの問いかけに対し空狐は強い口調で突き放す様に言い、少しとっつきづらい印象を与える。
それはブントに手の内をあまり明かしたくないという事なのだろうか、それとも……
それに圧倒されたのか、兵士はそれ以上何も聞く事なく周囲に残存する兵器との交戦を開始する。
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