第1131話 錆びついた右手の盾 刃こぼれした左手の剣

「ええ、もし魔王陣営が何か行動を起こすのであればスターから私達に連絡が来る筈よ、そうでなければ余計な混乱を引き起こしかねない。

例え私達が魔王陣営の動きに気付いたとしてもそれに合わせてどう動くべきなのか、少なくともその選択肢を用意するという事はスターであればやる筈」

「確かにその通りですね、スターはそんな迂闊な事はやらかさない。

もし已むを得ずそうしたのだとしてもだとすれば前線に出てくる可能性が高い、その方が私達が気付く事が出来る可能性が高まりますからね」


コンスタリオがその根拠として上げたスターという人物の内面はシレット、モイスも納得するに十分な説得力を秘めていた。


「で、ブントの意図を探る為にも残ったんだろうけど、これからどうするんだ?

まさか幼子みたいに賢くお留守番するって訳じゃねえんだろ?」


モイスがそう問いかけるとコンスタリオは


「ええ、ブントの意図の調査を開始するわ。

まあ、一応防衛部隊を率いると告げた以上戦況の把握もしておく必要はあるけどね。

流石に職務の怠慢は弁解のしようがないもの」


と返答し、飛空艇のモニターに現在の戦況を表示する。

表示された戦況には各エリアの人族、魔神族の配置状況が一目で分かるようになっていた。


「やはり中央突破という名目通り、戦力の大多数が中央の部隊に集まっていますね。

それは理解出来ますが……これは……」

「ええ、左右の陣に対する防衛戦力が幾らなんでも少なすぎる、これでは挟撃してくださいと言っているようなものだわ。

そんな事に気付かない司令官なのか、それとも……」


シレットの疑念に対し、コンスタリオも言葉を続け司令官に毒づく。

司令官と濁した言い方にしているのは此方側だけでなく、挟撃という行動を取らない魔神族側の司令官に対するけなしも含んでいるのかもしれないが。


「或いは初めからそれが来ないという事を分かっているかって所か。

いや寧ろこの場合その可能性の方が高いんだろうな」


モイスの発言に対しシレットもコンスタリオも首を縦に振って頷く。

どうやら二人も同じ考えだったようだ、確認するまでもなくそれを察する事が出来た。


「さて、作戦命令の出処を探ると言っても何処から探っていくべきか……」

「中央の突破戦力に南の大多数が集結している以上、恐らくはそこが全てブント、私達の様に防衛に回されているのがブント以外だとすればブント側のタウンのデータベースに侵入するのが一番早いのではないでしょうか?」


命令を探ろうとするコンスタリオに対しシレットはこう提案する。

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