第1129話 千載一遇の様で

「これは!?」


画面を見た防衛部隊の兵士は誰もが困惑する。

そこには他の大陸の様々な箇所から一斉に魔神族部隊の兵士、兵器が現れ、一気に人族部隊の方に進行してきていた。


「西大陸、東大陸、北大陸のありと汎ゆる場所から魔神族が来ていますね……」


あまりに圧倒的なその数にコンスタリオ小隊も言葉を失う。

それほどまでに今回の敵の数は圧倒的であったのだ。


「魔神族も一大決戦を仕掛けてきたという事なのでしょう……」

「これだけの数を差し向けられた以上、ここで防衛線を張っても尚突破されてしまう可能性がある。

そこで今回は此方から打って出る!!」


西大陸の司令とキャベル司令が発した言葉に一同は困惑を隠せない。

その命令は一見すると血迷っているようにしか聞こえなかったからだ。

だがその言葉の後に西大陸司令は


「皆さんが動揺するというのは良く分かります、ですがこれはチャンスでもあるのです、これだけの部隊を動かしているということはつまり、敵の本陣である魔王の周辺の戦力は必然的に低下しているという事、つまり魔王をこの機会に討ち、この戦乱を終わらせる好機とするのです」


と言葉を続け、その言葉にコンスタリオ小隊以外の兵士達は歓喜する。

だがその歓喜の渦に何処か不自然さを感じずにはいられないコンスタリオは


「つまり、この南大陸の全戦力を以て北大陸の軍勢を突破するという事でしょうか?」


と西大陸、キャベル両司令官に質問を投げかける。

すると西大陸の司令は


「いいえ、的にその狙いを勘付かれてしまっては元も子もありません、そこで南大陸にも最低限の防衛部隊は設置し、後はステルスシェードでその反応を隠蔽、そのまま北大陸の防衛部隊をやり過ごしつつ突破するというのが今回の狙いです。

無論、挟撃を回避する為に最低限の交戦をする可能性はありますが」


と何処か得意気に返答する。

だがその返答は寧ろコンスタリオに不信感を抱かせるのに十分な内容であった。


「なる程……ではその防衛部隊の指揮は私達に任せて頂けませんか?」


コンスタリオが唐突にそう口にすると西大陸、キャベル両司令は


「え!?貴方達が防衛部隊の指揮を?」


と明らかに困惑した声を上げる。

一方、その様子を見ていたブエルス防衛部隊の司令は賢明な判断、妥当な判断であると言いたそうな顔でコンスタリオを見つめる。


「コンスタリオ小隊の皆さん、しかしそれは……」

「最低限の防衛戦力は必要なのでしょう?であるならば私達も残るべきだと判断したのです」


困惑が隠しきれない声で話しかけられるとコンスタリオは直様切り返す。

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