第1103話 弄ばれる生命

だが、その奥に見えた光景は一同が自身の目を疑わせる物であった。

見た目からして儚く幼気な生命達が行列を成し、次は自分の番と言わんばかりに制御装置に組み込まれるのを待っていたのだ。

まるで百鬼夜行のような意思亡き者達の行進、それは不気味であるだけでなく何処か怒りも感じさせる。


「何なの……あの生命の子供達……人族と魔神族が入り混じっているけど……」

「恐らくは兵器の制御装置として利用する為だけに作り出されている生命なのでしょう……」


その光景を見て発されたシレットの疑念、そしてそれに対する豊雲の返答は目の前で起こっている事が一同の考える最も恐るべき自体そのものであり、それが実現してしまっている事を表していた。


「つまり、この先にあるのは……」

「恐らくは人造生命の製造エリアでしょうね……ブントが人造生命を作り出しているというのは既に周知の事実ですが、それがまさかこんな形で利用されているとは……」

「生み出していた人造生命を兵器の制御装置に利用したのか、それとも兵器の制御装置として生み出した人造生命を兵士として利用することも考え出したのか、あるいはその両方か……何れにしても放置しておくと碌でもない事になるのは確実ね……」


シレットが更に言葉を続けると豊雲はそれに答え、コンスタリオが疑念に対し仮説を唱える。

最も、その仮説も又、一行が内心に抱えている怒りをより強くするのだが。

一行がカプセルの進路を逆走し、カプセルに乗り込もうとしていた生命達の前に立つと生命達は一斉に魔術や妖術の詠唱体勢に入る。


「くっ、どうやら手洗い歓迎をするように躾けられているようね……」

「養育者がトチ狂ってると養育された存在もとち狂うってのは容易に想像がつくけどよ、それで世界に迷惑をかけるってんなら放置はしておけねえな!!」

「ええ、見た目は幼子だけど遠慮する訳にはいかないわ、何より、こうした生命をこれ以上生み出さない為にもここは鬼になるしか無い!!」


コンスタリオ小隊がそう言葉を発し、交戦体勢を取ると豊雲とアンナースもそれに続こうとする。

だがアンナースが銃を構えようとすると突然


「!?何!?」


と困惑した声を上げ、構えようとした銃を下げてしまう。


「どうしたのアンナース!?一体何が……」

「腕に……腕に力が入らない……銃を構えられない……」


コンスタリオがその声に気付き、アンナースの方を振り返るとアンナースは明らかに困惑した声と顔で銃を下に向けてしまっていた。

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