第1079話 見えてきた道

「つまり、ブントにとってもあの施設は重要であり、且つ手中に収めたいという狙いがあった……そういう事になるね。

そしてその回収にあの少女とコンスタリオ小隊を……」


涙名がそう言いかけるがそこにその話を中断するかのように涙名が持っている個別の通信機が鳴り始める。


「一寸失礼するね……」


そう言って涙名は通信の応対を初め、その後暫くの間特に何も話す事無く只頷きを繰り返す。

そして通信を切ると涙名は


「今の話、一部撤回するね。

本来であればこの任務はあの少女だけが向かう筈だった、ところが独自行動の許可が降りていたコンスタリオ小隊があの少女を見つけ、自分達も同行する事を申し出たんだ」


と説明の一部を修正し、他の面々もそれに納得した表情を浮かべる。


「成る程ね……独自行動の許可か……」

「うん、既に彼等もブントについての疑いを抱いていた可能性は極めて高い。

そうだからこそ彼は独自行動の命令を認めたんだろうしね」

「でも大丈夫なの?独自行動を認めたって事はコンスタリオ小隊が彼の事に気付いても可笑しくはないと思うんだけど……」

「もしそうなったとしても無闇矢鱈に混乱を広めたり、ましてや報復行為を行う事はコンスタリオ小隊はしないと思うわ。

だから現状で出来る事は、一刻も早くあの少女や今回の施設についての情報を収集し、コンスタリオ小隊に情報を伝える事。

約束もした以上、それを反故には出来ないわ」


涙名と星峰の発言により、当面の行動指針が決まる。

それはコンスタリオ小隊と協力し、ブントを追い詰めるという物であった。

それを口に出した訳では無いが、その場にいた全員が暗黙の了承で頷く。


「それも気にはななるけどもう一つ、あのアンナースと呼ばれていた少女は一体何者なの?いえ、ブントに所属している少女であるという事は判明しているけどそれ以上が分からない。

過去の経歴や入隊経緯と行った部分がね」

「空狐の疑問も最もだね……第一、今回の襲撃先を彼女は故郷だと言っていたけど、もしそうであるとするなら彼女は……」

「考えたくはないけど、その可能性も十分考えられるわね……だとするとブントにとっても彼女は重要な存在ということになる。

何とか彼女を引き離す事が出来ればブントにとっても少なからず痛手になるでしょうけど……」

「当然、ブントもそうした事態を避ける為になりふり構わず仕掛けてくる、そう言いたいんでしょう」


岬の発言から話はアンナースへの疑念に話題が変わり、空狐や星峰、涙名もそこに加わっていく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る