第1077話 これで……良かったの?
「……ありがとう、そういう合理的な所は変わらないのね。
少しだけ……安心したわ」
コンスタリオはそう告げるとアンナースの手を引き、シレット、モイスと共に星峰の出現させた転移妖術の紋章をくぐり抜け、その場から去っていく。
それを見届けた後、空狐は
「星峰……これで良かったの?」
と問いかける。
その問いかけに対し星峰は
「良かった……というより、何れは分かる事でしょう。
その時が今ここで来たというだけの話よ、それ以上でもそれ以下でもなくね」
と返答する。その返答に空狐は
「それは……そうだけど……」
とまだ他にも何か言いたげな様子を見せるものの、その様子に対して言葉が続かない。
聞きたい事、問いかけたい事が多すぎて自分の中でも整理がつかなくなっているのだろう。
その心境を察したのか、星峰もそんな空狐に対して苛立ちや煮え切らなさを感じたりはしなかった。
「さあ、僕達も戻って今回の一件、そしてあのアンナースという少女について調べよう。
大見得を切った以上、僕達も可能な限り情報を提供する責務がある」
天之御のその一言と共に開かれた転移妖術により、一同はブエルスへと帰還する。
そして何時も通りの謁見の間に着くと天之御は
「それにしても今回は予想以上に収穫があったね……」
「ええ、私の血族が残した良からぬ物を調査していたらそこにコンスタリオ小隊が現れて、更にブント側の少女もいてその少女の故郷が襲撃される」
「少し脇道にそれるけど、あの少女の故郷と言われていたあの街、少なくともブエルスのデータには記録が残されていないんだ」
「と言う事はつまり、あの街は記録に残せないような何かがあった、或いはしていた街って事か」
「街……というよりブントの単なる実験場と考えた方が自然でしょうね。
そうでなければあんな……生命を制御装置に用いて取り込むような兵器が存在していて何の反応も無いという事は考えにくいもの」
天之御、空狐、八咫、涙名、星峰が口々に今回の一件について意見を述べる。
それに続けて岬が
「恐らくはあの生命達もブントによって作り出されたもの……自分達で作ったのだから……という生命への冒涜としか言い様のない理屈でやっているのでしょうね」
と言葉を続けると天之御は
「その怒りは分かるけど、今は怒りを出す時じゃない、それよりも今回の一件についてまずは情報を整理しよう」
と岬を諭す様に発言し、まずは今ここに意識を集中するように促す。
それを聞いた岬は
「はい、了承しました」
と素直に頷く。
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