第1059話 魔王の驚異 魔王の苦悩
「結構な数の兵器ですね……これは」
「制圧した直後にこれだけの戦力を展開するとは……やはり司令部こそがこの兵器の、いえ、その背後にいる奴の標的なのでしょうか?」
「それを確かめる為にも突入するよ!!」
岬とシレットがそれぞれに感想を述べた後、天之御の一言で一同の顔は変わり、突入の覚悟を決める。
それは本来敵対している筈のコンスタリオ小隊も同様であった。
敵対する勢力、それも魔王の指示、従来であれば反抗心を抱いても不思議ではない、いや寧ろその方が自然とすら言える状況である。
だがコンスタリオ小隊の表情にはそうした感情は一切見られない。
寧ろこの状況を望んでいるようにすら只一人困惑しているアンナースには映っていた。
そのアンナースも覚悟を決めたのか、手には愛用の銃が握られている。
それぞれの内心を他所に天之御は先陣を切り
「魔王妖術……純黒の旋風!!」
と言って黒い竜巻を起こし、目の前に集まっている兵器を上空へと巻き上げて地面に叩き落とし、一瞬で全て破壊する。
その光景を見たアンナースは言葉を失い、モイスも
「やはり凄まじい力だ……これと対立するとなると相当な覚悟が必要になるな……」
と呟く。
だがその光景を見たコンスタリオは更に
「ええ……けど驚くべきはそれだけじゃないわ、周囲をよく見て」
と告げ、小隊の面々に周囲の風景を見る様に促す。
コンスタリオに促されるままにシレット、モイス、そしてアンナースが周囲を見渡すが、その光景は兵器が残骸に変わった以外は先程と変わらない。
「先程と変わっていませんが、それが何か?」
そうアンナースが問いかけるとコンスタリオは
「そうよ、さっきと変わっていない、変わったのは兵器だけよ。
それが何を意味しているか分かる?」
と更に言葉を続ける。
それを聞いたアンナースが
「?一体何を……」
と困惑した表情を浮かべるがシレットがそこで
「え……一寸待って下さい!!光景が変わっていないという事は……」
と大声を上げる。
その顔からコンスタリオが言いたい事が何なのか察知したようだ。
「光景が兵器以外全く変わっていないという事は……」
「そう、魔王は兵器だけを攻撃したのよ、あれだけの攻撃範囲を持つ妖術を使いながら……ね」
「そういう性質の妖術なのだとしてもそれを使うには相当な能力が必要な筈……やはり魔王の力は恐るべきものなのか……」
コンスタリオ以外の面々も力に驚異を感じるがそこに
「力だけ持っていても意味はないよ、この戦乱を止める事はこの力では出来ないんだから……」
と当の天之御が言葉を発する。
その表情は能力を誇っているようには見えず、寧ろ苦悩や悔恨を感じさせるものであった。
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