第1041話 強欲な無謀

シレットの魔法、モイスの銃撃、コンスタリオの格闘術、これらが合わさった連携は眼前の兵器を瞬く間に蹴散らしていく。

それを見ていたアンナースは


「コンスタリオ小隊の力……それはこの連携、いえ信頼にあるというの?

いえ、それは以前から分かっていた事の筈……なのに何故今疑問に思うの、私は……」


と自身の内心に何かの感情が芽生えているのを自覚する。

それは言葉で言い表す事の出来ないものであり、それ故にアンナースの内心を混乱させる。


「アンナース、立っていては駄目!!」


コンスタリオの其の言葉でふと我に返ったアンナースが上を見上げるとそこには兵器が飛びかかってきていた。


「つっ、今はこんな事をしている場合じゃない!!」


アンナースはそう言うと直ぐ様手に銃を持ち、飛びかかってくる兵器の真下を狙って弾丸を打ち込む。

其の部分が急所だったのか、兵器は即座に崩れ落ちるものの、その欠片がアンナースの周辺に降り注ぐ。

それに対してモイスが欠片に銃弾を撃ち、アンナースに直撃しようとしていた欠片を破壊して事無きを得る。


「あ、ありがとうございます……」

「ぼーっとしていたら的になるだけだ、なにか気になる事があるのかもしれないが、今は任務に集中してくれ」

「そうですね……私らしくないですよねこんなの」


モイスの叱責を受けたアンナースは作戦に対し気合を入れ直す、だがそれは単に任務を再開するというだけではないという事をアンナースはその内心で感じていた。

その内心はブントの命令以上の何かがある、本人が自覚しているのか否かはさて奥として。

迎撃の為に現れた兵器を撃退したコンスタリオ小隊はそのまま施設の内部へと突入し、その入口で周囲を見渡す。

すると其の内部は既に入り口から迷宮の様な形相を見せており、内部の調査は一筋縄ではいかないであろう事は容易に想像出来た。


「入り口から既にこれか……この内部の調査はそう簡単には行きそうにねえな……」

「ええ、そしてこんな所にアンナース一人で行くように指示するなんて……其の命令を下した存在は一体何を考えているの?」

「何も考えずに欲に目が眩んだか、或いは何か別の目的があるのか……」


モイスの言葉に続いているシレットとコンスタリオの発言は明らかにブントの上層部に対する侮蔑的な意味合いを含んでいたが、アンナースはそれに対し特に反応を示すことはなかった。

無論、この状況でそんな事を口にすれば自分自身に疑いの目が向くという事情はある。

だがそれだけでは説明出来ない部分が今のアンナースには存在していた。

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