第1015話 窮地の上塗り
「へへっ、そう来なくっちゃな!!」
そう語るモイスの声はアンナースの内心とは正反対と言って良い程に活発で嬉しさに満ちている様に聞こえる。
それ程に今回の申し出を受けた事が嬉しかったのだろうか。
一方、その声を聞いてアンナースは
「どうする……何とか地下で巻ければ良いのだけど、彼女達にそんな事をすれば余計に私達に対する疑念を抱かれてしまう可能性の方が高い……
第一、ここで私とあった事自体、偶然なの?いえ、今ここでそれを考えていても仕方ないわね……」
と内心の葛藤を更に強める。
そして地下へ通りていくとアンナースが先導する形で一同は地下通路を進んでいく。
「地下にある何かを引き上げるっていう話だけど、其の何かが何処にあるのか位は聞いているの?
そもそも場所が分からないと探し様が無いと思うけど」
「ええ、大体の場所は聞いています、ただ、キャベルの司令官の教え方が曖昧であったので少し迷うかも知れませんが……」
「曖昧って、それでよく司令官が務まるもんだな。
第一、地下通路の物の引き上げをなんでアンナースにやらせるんだ?」
シレットの問いかけに対するアンナースに返答に対し、モイスは更に疑問を重ねる。
其の質問にアンナースは
「それはどういう意味なんですか?」
とその真意を問いかけるが、それに対するモイスの答えは
「司令官なんだったら部下が居るはずだろ、其の部下にまずは命じるのが純なんじゃないかって事さ。
アンナースは別のタウンからの協力者であり、真っ先にアンナースに対して依頼するのは可笑しいんじゃないかって事」
と言われてみれば真っ当とも聞こえるものであった。
それを聞いたアンナースは
「まあ、今は私達も協力者ですから、協力者としての能力を見極めたいと言う糸があるのではないでしょうか?」
と何とか取り繕うとするがそこにシレットが
「それって、まるでアンナース達の事を信用してないみたいじゃない?少なくともそんな試す様な事をして来る司令官の部隊に協力したいとは私は思えないわ」
と更に言葉を重ね、アンナースは返答に窮する。
其の様子はさながら恥ならぬ窮地の上塗りの様な構図である。
「確かにそうかも知れませんが、現状私達は本来所属していた部隊が壊滅してしまっていますからね、贅沢は言っていられません」
アンナースはそう言って何とか其の会話を終わらせ
「さあ、この先にある筈です」
と言って足早に通路を進んでいき、コンスタリオ小隊もその後に続いていく。
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