第1001話 蘇る記憶、とどまる気持ち
だが増援が来たという事実自体が涙名の内心に別の疑念を抱かせる。
「ここに来た増援、少なくともブエルスの熱源反応では感知されていなかった……一体どうやって侵入してきたんだ?
新たに建造されたのか、それとも光学迷彩を用いていたのか、何方にしても厄介な話になる、それを確かめる為にも……」
涙名はそう言うと
「闇転移術……空虚!!」
といって自身を闇で包み、その体を転移妖術と同様に何処かへと移動させる。
一方、同じく兵器と交戦していた八咫は飛翔したものの、兵器の猛攻に晒されていた。
「ちっ、この狭い通路じゃ十分に飛行して移動出来ねえ、かと言って天井に穴を開ける訳にも行かねえ、どうすりゃ良い……」
狭い通路での戦いになる事事態が八咫にとって問題であり、それが思う様に戦えない苛立ちを感じさせていた。
そこを突いているという訳では無いのだろうが、兵器は八咫に対し猛攻を仕掛けてくる。
「つっ、ギリギリで躱すのが精一杯か……」
その焦りからか、八咫は躱しながら兵器に向かっていこうとするが、その時その脳裏に本人も今まで忘れていた記憶が過る。
「八咫、焦っては駄目だよ……敵の動きには癖がある、同士として君を守る為に焦りを抑えて欲しい。
その焦りを真の意味で力に変える為に」
その記憶は何時だったか、天之御と共に戦場に並び立っていた幼少期の記憶であった。
最も、戦場に立っている位なのだからそこまで幼いという訳でも無いが。
その記憶が何故このタイミングで過ったのか、それは八咫本人にも分からない、だがその記憶が過った事は
「!!殿下……何故この記憶がこのタイミングで……」
と八咫を焦りから現実に引き戻すには十分な材料となった、そしてその動きは止まり、待ち構えていた兵器の大型レーザーが暴発しそれに巻き込まれるのを防ぐ。
「今の勢いで仕掛けていたら俺は……そういえば今の記憶の時もそうだった……あの時も敵は俺を狙い、強力な一撃を狙ってきていた。
それを防いでくれたのが殿下のお言葉だった……」
内心でその時の事を反芻する八咫はその甲斐あってか冷静さを取り戻し、兵器の動きに目を配る。
「そうか……焦るな……俺の真の力を引き出す為に!!」
そう言うと八咫は翼に妖力を貯め、その色をより濃い物へと変化させていく。
そしてその色が純黒と言えるまでに変化すると
「黒羽の……否、黒翼の乱舞!!」
といい、その翼に力を込めたまま兵器に向かって突撃していきその部品を裁断していく。
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