第985話 天之御の下す審判

「愚か者の薬云々は置いておくとして、其の兵士からブントの新情報は得られると思う?」

「僕の予測だと恐らく新情報は期待出来ないだろうね、これだけ裏で動き回っている組織が末端の兵士までシッカリと情報を伝達しているとは考えにくい。

恐らくは最低限の情報しか提供していないんだろう、そしてそれが今回のエアロタウンの一件へと繋がっているという部分もある」

「其の点は私も同意見よ、だけど今回、ブントの兵士がこうして暴走してくれたという点にこそ意味がある。

末端の兵士とはいえブント同士の激突が起こったとなれば今後の身の振り方を考えざるを得ない上、取り込もうとしていたコンスタリオ小隊にも疑念を抱かれた事を把握せざるを得ない」

「これで奴等も軌道修正をせざるを得ないから、そこに僕達が付け入るスキが生まれる可能性があるね。

其のためにもまずはこの兵士に対する処罰をしっかり下さないと」


星峰と天之御がそう意見を一致させた所に空狐が部屋の中に入ってくる。


「空狐?何かあったの?いきなり入ってきて……」


星峰が入ってきた理由を尋ねると空狐は


「ええ、先程から南大陸におけるブント側の魔神族部隊から何度も通信が入ってきていて……」


とその理由を説明する。

それを聞いた星峰は


「大方減刑の申し出ってところでしょうね、仲間を庇う素振りを見せる事で少しでもブント本体への影響を軽減し、更に自分達への火の粉を抑えようとしている、そんなところかしら?」

「つまり、星峰が話していた今回の一件の動きに関連した通信という事ね。

そしてぞの実質は仲間を庇っているようで実際は自分達のことしか考えていない、だけどこのタイミングでブントがこんな関連性を疑わせる事をするのかしら?」

「それが判断出来ない程混乱しているのか、それとも何か別の狙いがあるのか……何れにしても此処で下手に減刑はしない方が得策なのは言うまでもないわ」

「ああ、処分はきっちりと伝えさせてもらう。

まずは彼等に此方に出頭して貰わないとね」


と空狐、天之御と話し、このタイミングで動いたのが実際には自分の身を守ることしか考えていない存在であるという事を断言する。

そしてそれを言い終えると天之御は手元の端末で何かの文章の作成を開始し、それを終えると同時に送信する。

其の送信を終えると目の前のモニターに先程画面に写っていた司令官と指揮官の姿が再び映し出される。


「天之御様……この文章に書かれていることは一体……」


指揮官と司令官は明らかに困惑した表情で言葉を揃えてそういう。

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