第984話 自嘲と自重の間で

「コンスタリオ小隊の隊長である彼女がそこまで私情で動いた事は今まで無かったって事?まあ、隊長という立場であればある程度自重は必要だろうけど……」

「ええ、少なくとも私がコンスタリオ小隊に加入している間、隊長が私情にかられてこんな行動を取るなんて事はありえなかった、そして私達と交戦している最中も兵器の使用は最低限に抑えていた。

にも関わらず今回の作戦ではまだ調査も行っていない状態で兵器を起動させ、且つそれをエアロタウンのブント部隊にも矛先を向かわせていた。

勿論言い訳をさせない為という狙いもあるのでしょうけど、それだけでない何かを感じずにはいられないわ……」


天之御の発言に対する星峰の返答から、コンスタリオの今回の行動はこれまでのコンスタリオから考えると明らかに異質であり、星峰から見ても異様に映っていた事を伺わせる。

それについて天之御が


「珍しく私情で動いているか……まあ、故郷であればある程度の私情は入ってきてもおかしくないけど、兵器を持ち出しているという事はなんとしても守りたい、大切な場所という訳でもなさそうだね……

彼女の暴発が、場合によっては僕達も、ブントも、そうでない部隊も巻き込んだ緊急事態を引き起こす可能性は考えられる。

其の事を想定してストッパーになる存在を用意する必要もあるかも知れないね」


というと星峰は


「ええ、隊長を信頼しているからこそ、今回の行動が余計に異質に映って仕方ないの、もし隊長がエアロタウンに対し鬱屈した感情を抱いているのだとすれば、それが今後どんな形で暴発するか……」


と内心の不安を隠しきれない様子だ。

そんな星峰に対し天之御は


「……君の不安は僕も分かち合ってあげる、だから虚勢は張らないでね」


と何処か優しげな中にも強さを感じさせる言葉を伝える。

それに対し星峰は


「……ありがとう」


と普段からは余り想像出来ない控えめな言葉遣いで感謝の気持ちを伝える。


「で、今回暴走したブント側の兵士についての処分はどうするつもりなの?流石にお咎め無しという訳にはいかないでしょう」


星峰が口調を何時もの調子に戻してそう伝えると天之御は


「まあ、彼等が知っている事は洗いざらい話してもらうことになるだろうね、これだけの醜態を晒した以上、覚悟は決めてもらわないと。

愚か者に付ける薬は無いからブントの上層部がかばうとは思えないし、まあ、其の薬を調合できなかったという点では僕も同じなのだけどね……」


とまたしても自嘲気味に発言する。

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