第978話 敵への信頼を抱いて
「一応聞いておきますが、其の彼等というのはやはり……」
「ええ、魔神族の魔王達よ。
彼等は明らかに裏側組織にその照準を絞りつつある。
だとすれば人族側にも彼等に協力する者が居たとしても不思議ではないわ、いえ、寧ろこの場合、彼等は積極的に人族側と関わっているのかも知れない」
「裏側組織を討伐する為に……ですか」
シレットがコンスタリオに対して確認する一言を告げるとコンスタリオは明確にこう返答する。
其の返答はモイス、シレット共に予測し、且つ納得のいくものであった。
否、嘗ての彼等であれば納得はいかなかっただろう、だが今の彼等にとって、それは納得出来る、それ以外の回答は納得出来ないものであった。
それほどまでに彼等の中で魔神族の、少なくとも魔王に対する価値観は変化していたのだ。
「もし、司令と魔王に繋がりがあるとすれば、既に人族側にも裏側組織に反抗する勢力はあるということになりますね」
「其の彼等と上手く接触出来れば今後の動きもやりやすくなるかも知れねえが……」
シレットの発言に続くモイスの発言は至極納得の行くものであった、だが其の言葉の詰まりにはモイス自身、何か腑に落ちない点を抱えているようにも聞こえる。
「モイス、何か懸念があるの?」
「ああ……もしかしたらブエルスの陥落にも司令が関わってるんじゃねえかって今更だけど思えてきた」
モイスの表情から内心の懸念を抱いている事を見抜いたコンスタリオはこう問いかけて其の懸念を聞き出す。
それに対するモイスの返答を聞いたシレットとコンスタリオの表情も又はっとしたものになる。
其の可能性は完全に失念していたといった表情だ。
「もしブエルスが陥落した時点で司令官が魔王とつながりを持っていたのだとしたら、其の可能性はありうるわね……けど、そうだとするなら……」
「最悪、ブエルスの上層部に其の裏側組織の存在が入り込んでいた可能性も有り得る……と言う訳ですね。
しかもそれも恐らくは法皇クラスのレベルで」
シレットとコンスタリオは其の気付きからこう推測する。
無論、其の内容の是非は彼等が知る由もないが其の推測は的中していた。
「裏側組織がもし大陸の頂点に収まっているとしたら、このキャベルも危うい部分があるわね……いえ、寧ろこの状況から考えると裏側組織は略全てのタウン、大陸に入り込んでいる可能性の方が極めて高いと推測するべきでしょうね」
「そうだとすると、魔王が各大陸を制圧しているのは……」
コンスタリオは更なる仮説を組み立て、モイスもそれに同意していく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます