第973話 故郷との別離
「そうね、手掛かりを得るという視点からもあの魔神族を救助するのは名案だと思うわ、早速兵器を向かわせましょう」
コンスタリオはそう告げると手元の機械を操作し、其の兵士の元へと向かわせる。
其の兵士は兵器に向けて武器を向けようとするものの、負傷の為か動作が覚束ず明らかに手元や足元が震えていた。
恐怖による震えではない、それはその兵士の表情が物語っていた。
兵器はそんな兵士の体を抱きかかえるとそのまま何処かへと移動を開始する、どうやらこの兵器には負傷者を救助する機能も搭載されているようだ。
「さて、兵士を救助したのに周囲が兵器ばかりというのは落ち着いて負傷を治そうという気持ちにはなれないでしょうからそろそろ私達も今度こそ戻る事にしましょうか」
「宜しいのですか?もうデータは……」
「ええ、全て収集したわ、これなら例え今此処でこの施設が破壊されたとしても問題は発生しない筈よ」
コンスタリオが戻る事を提案するとシレットはふと内心で思った疑問を口にする、それに対しコンスタリオは明快な返答をするものの、其の返答に対しシレットとモイスは首を縦に振りはするものの、その内心では
「コンスタリオ隊長……やはり貴方は……」
とコンスタリオに対して異なる懸念を抱いていた。
今の発言の中にあった施設が破壊されたらという発言が彼等二人にはコンスタリオ自身が内心何処かでそれを望んでいる様に聞こえたからだ。
だが其の事を口にすることはしない、否出来ない、それ程デリケートな問題であるという事がコンスタリオの様子から察知出来るからだ。
「さあ、戻って報告を行わないとね」
そう告げてコンスタリオが帰路に付き始めるとシレットとモイスも黙ってそれに同行する、だが今のコンスタリオの発言は何処か空元気を出しているようにも見えた。
三人が施設から出た後、目に入ってきた街の様子は此処に来た時と変わらない、一見すると長閑だがその内心では警戒心が渦巻いている、そんな様子であった。
だが、先程タウンの直ぐ側で戦闘があった事を考えれば明らかに落ち着いていると言える、この冷静さもこのタウン故なのだろうか、それとも……
一方、コンスタリオ小隊も特にその状況を確認する事も無くタウンの外に出て飛空艇のある方へと戻っていく、其の様子を見たシレットが
「ねえ、モイス……」
とモイスに耳打ちをするとモイスは
「ああ、やっぱり隊長の内心には何かが渦巻いている……」
と更にコンスタリオの内心で抱えているであろう問題を推測していた。
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