第948話 自然の要塞

「この樹林も薄暗いですね……何だか不気味な雰囲気です……」

「体調の生まれ育った場所をあまり悪く言いたくはねえけど、正直それは俺も同感だ……この薄暗さ、何とも言えねえ不気味さが漂っているぜ……」


シレットとモイスの二人が森林の薄暗さに不安を隠せないのに対し、コンスタリオは流石に生まれ育った地という事もあってか平然と先に進んでいく。

だが二人の不安も理解しているのかそれに対してある種悪口と言えなくもない会話が交わされているにも関わらずその内容を注意したりはしない。

そして暫く進んでいくと先程上空から目視出来たタウンが目の前に迫ってくる。

だがその規模は上空から目視するよりもずっと大きく、上空からはまるでミニチュアを見ているようだったが眼前に迫っていたタウンの大きさは予想を遥かに上回っていた。


「これが……隊長の生まれ育ったタウン……」

「でけえ……ブエルスやキャベルに匹敵するんじゃねえか……」


その大きさは初めて目にしたシレットやモイスがブエルスやキャベルと比較していることからも明らかである。


「そう、そして断崖絶壁と樹海に覆われているタウン、故に此処が何と呼ばれていると思う?」


コンスタリオが少し意地悪気に二人に質問を投げかける、無論本人は答えを知っているのだろう。


「何と……呼ばれているんですか?」


当然二人がそんな事を知っている筈もなく、周囲に圧倒されていたのもあってこう答える以外に答えは見つからなかった。


「街という名の要塞、それがエアロタウンの別名よ。

それも自然の防壁に囲まれた……ね」


コンスタリオの回答を聞き、シレットとモイスは共に西大陸の最終決戦を思い出す。

あの時人族が、正確に言えば人族側のブントが投入した最終兵器もタウン一つを丸ごと抱えている要塞だったからだ。

最もあちらは全てを兵器、機械で賄っていた為、此方とは全く意味合いが違ってくるのだが。


「ええ、それ故に外部との交流もあまり盛んではなく、エリート意識が強い者が集まっているとも言われているわ。

まあ、私が此処で過ごしていた時はほぼ末端の兵士だったから組織図までは深く把握していないのだけど」


コンスタリオがそう告げている間にタウンへの入り口はもう目の前まで迫っており、その門は何の躊躇いもなく開かれる。


「門番すらも居ないのですね……要塞に慢心を……」

「いいえ、そうじゃないわ、周囲を見て」


シレットが少し苦言を呈しようとするが、コンスタリオの発言の後に周囲を見渡すと顔色が変わる。

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