第943話 敵は身内に?味方は身内に?

「なら、その裏の勢力はスターのお父さんを手に掛けただけじゃなく、スターを手中に取り込んでその勢力を拡大する事も目論んでいたっていうの!?」

「その可能性も否定出来ないわね……だけどそれだけじゃない、もしかしたら私達もその魔手に絡め取られている可能性もあるわ」

「俺達も……つまり、俺達が軍に入るまでに遭遇してきた魔神族部隊もその裏側の勢力が指揮してたかもしれねえって言うのか!?」

「あくまで可能性の話ではあるけど、十分考えられる事よ。

シレットの故郷を襲撃したのも、モイスの恩師を手に掛けたのも、そして私の親族を相次いで魔神族が襲撃してきたのも全てね……」


コンスタリオ小隊が考えている仮説は昨日までの自分達であれば


「まさか!?」


と思わずにはいられない内容であった、それ程までに今回スターから齎された情報の衝撃は大きい物であるという事を改めて認識させられる。

そしてコンスタリオ小隊がそれぞれ脛に傷を抱いている事も明らかとなった。


「一寸待って下さい……スターの話だと裏側勢力の暗殺部隊は自分達の情報が外部に流出しそうになった時に行動を起こしているという事ですよね。

だとしたら私の故郷、モイスの恩師、隊長の親族それぞれに裏側勢力に繋がる何かがあったということなのでは?」


此処でシレットが呟いた一言が飛躍した仮説に混乱しかけていたコンスタリオの思考を冷静な状況へと引き戻す。


「その可能性は考えられるわね……」


こう呟いた事がそれを証明していた。


「つまり、その裏側勢力に迫っていたって事か?」

「あるいはその裏側勢力に属していたけど、何らかの理由で狙われる側になったか……そんな所でしょうね。

流石に何の理由も無しに手にかけるとは考えにくいもの」

「あの人が裏側勢力に……信じたくねえけど、考えるしかねえよな……」


それぞれの関係者が裏側勢力に対しどの様に関わっていたのかを彼等が知る由は当然無い、だがそれが逆に彼等に道を指し示した。


「なら、それを調べれば裏側勢力に迫れるかもしれねえって事だからな」

「ええ、なら私達の取るべき道は……」


シレットとモイスが熱り立つが、そこにコンスタリオが


「そういう事になるのかもしれないけど、それは当然この裏側勢力が抱える暗殺部隊に私達も狙われるリスクが飛躍的に高まるということにもなる、その事は頭においておく必要があるわよ」


と二人に釘を刺すように告げる。


「スターが暗殺部隊の事を告げてきたのは恐らく私達が既に暗殺部隊との関わりを避けられないと察しているからかもしれないのだから」


更にこう告げて熱り立つシレットとモイスを冷静な思考へと引き戻していく。

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