第934話 父の意思 父の言葉

「つまり、天之御殿下のお父上の前の魔王までは一貫してブント側であった可能性があるって事ね……いえ、この場合寧ろ殿下のお父上である先代魔王様はそれを承知していたからこそ、魔王の座を狙ったのかも知れないわね」

「ブントにそれ以上魔王の座を渡しておく訳にはいかなかったからって事?考えられなくはない話だね。

そして当然、ブントからすればそれは疎ましい話であり、それを阻止しようとした」

「言われてみれば父が魔王になる直前、人族との交戦において激戦が多くなっていた気がする……最も、幼少期の記憶だから曖昧な部分も多分にあるけどね……」


天之御の父親に関する話題が出た所でそれとブントに関連する情報が繋がり、一同はブントがやはり天之御の父親を疎ましく思っていた事、そしてその息子であり意思を継いでいる天之御も疎ましく思っているであろう事を想像する。

その想像は一同が天之御をより守ろうと決意するには十分な物であった。

一方、天之御もまた、父の意思を受け継ぎ、この世界に平穏を齎す決意をより強める。


「このページを境に書かれている資料の内容は完全に逆転しているな。

これまでブントが働いてきた悪行はほぼ全てこの部屋にある資料に記載されている……これらを全て調べるのは相当な時間がかかるだろう、だがブントの闇に迫る為にもやってみせる!!

願わくば私の代でこの戦乱を止め、息子を始めとする次の世代にこの呪われた戦乱を続けさせない為にも……」


八咫が続けて読み上げた文章には天之御の父が記したと思われる物が書かれており、そこからは次世代や息子を思う気持ちがありありと感じられた。


「父上……その志半ばで散った思い、私が必ず成就してみせます」


先程強めた決意をその文章を聞いた天之御は更に強め、他の一同もそれに同意する。

更に天之御は


「今の文章、一つ重要な事が書いてあったね」


と言葉を続ける。

その言葉とは取りも直さず


「これまでブントが働いてきた悪行は全て……の一文だね、天之御のお父上の言葉を疑う訳じゃないけどもし仮にその一文が事実であるとしたらこの部屋の資料をくまなく見ればブントがこれまで行ってきた悪行の全てが判明するってことになる。

だったら尚の事、この部屋の資料を徹底的に洗い出す必要があるね」


と涙名が説明したその部分である。


「うん、この部屋の資料にブントの事が網羅されているのだとすればそれをチェックするのは再優先事項ということになる。

片っ端から調べていこう!!」


父の言葉という事もあり、天之御の気合が入ったのか一同は更にスピードを上げて資料をチェックしていく。

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