第932話 見えてきた希望
「けど……一体なんで態々兵士を外で育てるなんて……」
「戦乱を煽る口実にするつもりだったのかも知れないね。
外で兵士を育て、その兵士を連れ戻す際には何らかの指示や策略が入り込む余地がある、そこで人族と魔神族の戦乱を煽っておけば……」
「そのまま戦乱を継続する理由にもなるという訳ですか……嫌らしい話ですね」
岬の思った疑念に天之御が答えを返すと岬は完全に嫌悪感を顕にする、その様子から自身が嘗て体験した故郷の襲撃を思い出しているのだろう。
そう考えるには十分な雰囲気を出していた。
「この子もその被験体だったかも知れないという事は、その隠滅された場所は……」
「更地となっているか、それとも別の街が建造されたのか、その辺りだとは思う、そのまま放置しておいたらあからさまに証拠を残す事になるからね。
けど、この資料を残した奴は随分几帳面みたいだよ、態々資料にその場所を記述してくれているんだから」
涙名が少し悲しげな声で呟くと天之御はそれに対し皮肉とも助かったとも取れる口調で返答し、そのまま資料に記載されている地図を他の面々に見せる。
「これは……現在のエリアで言うと殆がブント側の支配下に置かれていた街ですね。
という事はつまり……」
「後者の別の町が建造されたパターンになっている可能性が非常に高いって事か。
だけどそれなら調べ様はある!!」
空狐の発言に八咫も同意し、更には天之御も首を縦に振る。
それは先程の涙名の発言が置かれていたという過去形になっていた事からも分かる様に現在はそれらの街も殆がブント側から開放されている事の表れであった。
「となると、現状でそれが行き詰まるのは……当然ですが南大陸ですね。
彼処はまだブントの支配から逃れられていません、それにブントとしても最後の砦でしょうから何が何でも死守しようとしてくる筈です、其処がこの子の生まれた場所であった場合、現状で手は出せません」
「その点はもうそうでない事を祈るしかないね、だけど手を拱いている必要が無くなったことは大きな進展だよ。
後は調べてもらう事が出来るようになったんだから」
行き詰まる可能性は残りつつもその後の進展が見込める可能性はある、その事実は天之御を、そしてそれに引っ張られる形で他の面々の気持ちも前向きにしていく。
「さて、だったらこの勢いのままにまだまだ資料を調べていかないとね」
天之御は更にこう言葉を続け、それを了承する形で一同は資料を更に読み進めていく。
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