第919話 深まる疑惑

そして二人が司令部の入り口までやってくると其処には既に星峰を始めとする他の面々が待機していた。


「やれやれ……やっぱり此処に居たんですね、まあ、星峰の予測通りではありましたが」


そう食う子が口火を切ると涙名は


「星峰の?それはどういう……」


と少し疑問を含んだ返答をし、それに対し星峰は


「別に深い予測をした訳ではないわ、敵部隊が退却したのであれば状況から見て司令部で全体の被害、侵攻の様子を確認するのがこの場合のセオリーだと判断しただけよ。

そして天之御であれば必ずそれを行う為に此処に行くでしょうと予測した、ただそれだけの話」


と簡潔に、だが断言し発言をする。

それを聞いて天之御も何処か納得した表情を浮かべる。


「その通りだよ、そして星峰の予測通り、僕は先程司令官に会って来た。

恐らくはブント側何だろうけど、少なくとも今回の襲撃については本当に事前に知らされておらず、いきなり行われたという事だった」


天之御は先程の司令官の発言をこの様に解釈しており、それを一同に伝える。


「各エリアに点在していた兵士の戦い方や発言から考えてもそれはまず間違いないでしょうね。

でも、そうだとすると……」

「うん、誰がこの襲撃を目論んだのかという疑問が浮かんでくる。

この状況で内部抗争に先史遺産の兵器を持ち出すのは幾ら何でも問題がありすぎる、ブントの上層部だってその点は考えている筈」

「それを承知でやらかしたって線も考えられなくはねえが、それは可能性としては限りなく低いのは明白だ、となると他に考えられるのは……」

「現状ではまず一つに可能性を絞り込む事は出来ない。

情報が少なすぎて幾らでも推測出来てしまうからね、それに今回の兵器は明らかに統率の取れた動きをしてきていた、その点も明らかにこれまでの兵器とは違う点だ。

指揮官らしき存在が居たことも含めてね」


一同が今回の兵器の襲撃について意見を交わしている、だがそれは今回の襲撃がそう簡単に結論を出せる話ではないという事を示していた。


「とにかく、此処で話していても仕方ない、一度ブエルスに戻って今回の襲撃について整理しよう」


天之御のその一言で一同は揃って頷き、転移妖術で何時も通りブエルス、謁見の間へと戻っていく。

そして移動が終わると一同は早速先程の話の続きを始める、それ程今回の一件について色々話したいのだろう。


「明らかに統率の取れた兵器の襲撃……これまでの兵器の動きとは明らかに違う、これまで先史遺産の影に隠れていた連中が愈々動き出したということなのでしょうか?」


真っ先に口火を切ったのは空狐であった。

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