第917話 疑惑の司令官

一見すると地震の様にも取れるが天之御が何かをしたような素振りは見られない。

そしてその崩れた地面の下から爪の様な物が出現し、指揮官らしき大型兵器を貫く。

そのまま大型兵器を機能停止に追い込むとその崩れた地面は周囲の小型兵器を飲み込んでいく。


「やれやれ……態々こんな事しなくても勝てたんじゃないの?」


その言葉と共に現れたのは涙名であった、その口調は何処か誂っている様にも呆れているようにも聞こえる。

その言葉に対し天之御は


「そう言いながらもこっちの意図を汲んで行動してくれた事は本当に感謝しているよ、万が一此奴がフェイクだったら次の奴に向かわなきゃいけないからね」


と何処か軽い感じで返答する。

その返答は少なくとも魔王がするものとは思えない、

その直後、通信機器が復活したのか天之御の端末に街の司令部から通信が入ってくる。


「もしもし、此方天之御だけど、何かあったの?」


天之御がそう返答するとその通信の相手は


「天之御様……この度はこの街に対する侵攻を阻止して下さった事、本当に感謝しています、私は……」


と言いかけるが天之御は


「通信機越しの長話は良いよ、今からそっちに行ってあげるから対面でゆっくり話そう」


と返答し、その相手が


「え!?いえ、その……」


と言いかけるのも聞かないままに転移妖術でその相手の近くへと移動する。

どうやら通信端末の電波の方向から何処からの通信なのかを特定したようだ。


「こ、これは天之御様……自分がこの街の防衛部隊の司令官です……」


天之御が転移してきたのを確認すると先程の通信の主と思われる同じ声色をした魔神族がそう話しかけてくる。

だがその声も口調も、そして話し方も何処かぎこちない印象を受ける。

天之御との出会いで緊張しているのか、それとも……


「この司令官、天之御に対して何か必要以上に意識しているように思えるね、それはこの司令官がブントの構成員であるが故なの?それとも只単に魔王と対面していることに動揺しているだけ?」


共に転移妖術で移動してきた涙名が司令官に対して疑念を抱く。

それを知ってか知らずか天之御は


「所で、今回の一件は一体何があったの?」


と急に真顔となって司令官に問いかける。

すると司令官は


「詳細は分かりません……この近辺にある先史遺産の遺跡からいきなり兵器が出現したという報告を受け、その迎撃に当たろうとしたら既に部隊を展開されて通信を妨害され、各々が各戸に応戦していたというのがこの状況です」


と何があったのかを説明する。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る