第893話 モイスの激励
失策を演じたコンスタリオに取って、今のブエルス部隊司令官の発言は完全なる助け舟であった、それがなければ今頃は自身の発言について、そしてスターから提供されたデータについての追求は免れなかっただろう。
コンスタリオ自身、其の自覚は持っており、その内心において
「司令官……ありがとうございます、そして、申し訳ございません」
と口にこそ出さないものの司令官に対する感謝と懺悔の気持ちを抱いていた。
「現状、南大陸においては魔神族の動きは見られません。
まあ、魔神族の支配下にあるエリアがこの大陸は圧倒的に少ないのですから当然といえば当然ですが。
ですが、魔神族の捜し物がこの大陸にも存在している可能性は十二分に考えられます。
其の事を踏まえると他のタウンへもこの一見は伝えておくべきでしょうね」
キャベルの部隊司令官が告げたその発言自体に異を唱える者は居なかった、だが今の発言を聞いたコンスタリオは
「え……捜し物って……」
と捜し物という発言に引っかかりを覚える。
其の直後、司令官は集まっていた面々に解散指示を出し、元の任務に戻る様に指示を出す。
それを受けてコンスタリオも自身の部屋へと戻り、そこでスターから送られてきた文章、データを解析していたシレット、モイスと顔を合わせる。
「隊長、警報の詳細は何だったんですか?」
コンスタリオが戻った事を確認し、シレットが其の内容について問いかける、するとコンスタリオは
「予想だにしない事が起きていたわ、そして、とんだ失態を演じる事にもなってしまった……」
と言い、先程司令室で起こった事、聞いた事の一部始終を話す。
「そんな事が起こったんですか……」
「ええ、そして其の事について、いえ、スターのデータについて声を出してしまったのは明らかに私の失態だわ、もしこれでスターの意図に何か支障をきたしたら……」
「そんな事は今ここで考えても確認の仕様がねえ、それよりも其の失態を取り返す為に今何が出来るのかを考えた方がいいと思う」
コンスタリオが失態を犯したのが余程珍しいのか、シレットは少々疑っている様な声を上げる。
だがコンスタリオの表情を見てそれが事実である事を悟ったのか其の顔は神妙なものへと変わる。
一方のモイスはというとコンスタリオの失態についてはシレットと異なり初めから事実として受け止めているが、其の言葉の中には激励の意図も感じられる。
それを汲んだのかコンスタリオは
「そうね、そう考える方が前向きね」
と少し笑顔を取り戻す。
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