第872話 魔を使う兵器
その時、部屋の奥の方から物音が聞こえてくる。
いや、正確には物音とは言えず、それ処か小さな音で普段の生活の中ではかき消されてしまいそうな音量である。
それでも聞こえて来る程にこの部屋は静けさのみが漂っているのだろう。
だがそれが逆に一同の不穏な感覚を刺激する。
「音……何かが此方に向かってきます」
「此処で可愛い生命と触れ合えるとは思えないね……となると、考えられるのは……」
空狐と天之御がそう口にすると同時にその音を鳴らしている主はその姿を一同の目の前に表す。
それは案の定兵器であった、それも大型であり、その節々にはこれまで戦ってきた兵器との類似点が見受けられる。
「これまで戦ってきた兵器の長所を寄せ集めている様な印象ですね。
でも、だからといって無理矢理に接合しているような感じでも無い……それだけ此の兵器が優秀な能力を与えられているということなのでしょうか?」
「あるいはこれを雛形にしてこれまで戦ってきた兵器が生産されてきたのか……何れにしても此の兵器が厄介な存在なのは間違いないみたいね。
それも……」
岬の口から発せられた疑念に星峰が言葉を続けると同時に背後から更なる兵器の集団がその姿を表す。
先陣を切って現れた兵器と同系型なのか、外見上には差異は見受けられない。
「少なくとも少数生産はされているって事か……しかも此処は此の兵器の生産場所と思われるラインも可動している。
少しばかり厄介な事になりそうだな」
八咫がそう口にすると同時にその兵器は一斉にミサイルや機関銃を乱射してくる。
一同は散開してそれを躱し、反撃に直ぐ様移る。
「ええいっ!!」
空狐はそう言うと剣を振るい、その先端から鎌鼬の様な物を放って一部の兵器の右側に傷をつける。
だがその傷はみるみる内に修復され、直ぐに跡形も無くなってしまう。
「自己修復能力も備えている……やはり此の兵器はこれまでの兵器とは少し違う……」
今の一連の流れを見て空狐は改めて警戒心を強める。
そんな空狐に今度は二体の兵器がそれぞれ紅いビームと蒼いビームを放って攻撃してくる。
空狐はそれを躱すが、紅いビームが当たった場所は溶解し、蒼いビームが当たった場所は瞬く間に凍てつく。
「同じ箇所から放たれているのにビームの色が違う……これもバリエーションを持たせるという兵器の開発目的故なの?」
空狐の内心はそう疑念を抱くが、その直後に天之御が
「今のビームを放つ際、僅かだけど魔力の波長を兵器から感じたよ」
と意味深な発言をする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます