第837話 それぞれの裏顔

「そうですね……此処で暗くなっていても仕方ありません。

それよりも前向きに考えるとしましょうか!!」


ブエルスの部隊司令官もそう告げてアンナースに賛同し、全ての司令官とアンナースはその場で首を縦に振って同意する。


「では、私は全ての兵士に此の事を伝えてきますので」


キャベルの司令官がそう言ってその部屋を後にする。

だがその直後の


「……やれやれ、とんでもない事をしでかしてくれたものね、あんた達の上司は」


という西大陸司令官の一言で再び、いやそれ以上に部屋の空気は重苦しい物になる。


「何を言う……お前達が不甲斐ないからサルキス様が……」

「そのサルキス様が焦って侵攻してくれた結果が西大陸を失うということなんだけど?

西大陸はそれでなくても慎重に物事を進めていく必要がある場所だったのに……」

「そうね……あそこには未だ調査出来ていない先史遺産も数多くあった、そこを〇〇取られたとなっては今後にどう影響してくるか……」


司令官同士が啀み合いの空気のみを出しているのに対し、アンナースは啀み合いの空気に同調しつつも少なくともその一部は今後を見据え、分析を行っていた。


「……それについてはお前達も同罪ではないのか?お前達がさっさと調査してサルキス様に協力していれば……」

「だからそれは……」

「いいわ、確かに西大陸陥落の責任は私達にもある、その点は認めましょう。

なら、今後すべき事はその西大陸を奪還する手筈を整える為に此処の部隊を此方に取り込む事の筈よ。

今此処でこんな事を話していても仕方ないわ」


司令官が尚も啀み合おうとするのをアンナースは諭す様に止める。

それは今後を見据えての事なのか、それとも……当然、その口から自身がサルキスに止めを刺した事等が出てくる筈は無かった。


「で、具体的にはどうやって取り込むつもりだ?

此方側の部隊は既にキャベルの防衛部隊と共闘している関係上上手く入り込めているが、そっちの部隊はこれからになるはずだ。

それに彼等も我々の存在を疑い始めているのだろう」

「ええ、その点が厄介なのよ。

もしこの状況で下手に動いて私達の存在がバレれば下手をすれば裸一丁で追い出されることになりかねない」

「既にコンスタリオ小隊に疑いの目を向けられている以上、その点についてはかなり慎重になる必要があるわ。

此処で魔神族が動いてきてくれて一緒に迎撃した……って言うような物語が描ければ良いのだけど、中々そうも行かないでしょうしね」


司令官とアンナースがこう話す、その内容からブエルスの司令官も又ブントの構成員である事は明らかであった。

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