第826話 サルキスの最後

「誰だ!?」


今度は気の所為ではない、明確に前から影が伸びてきた事がそれを証明していた。


「お前は……」

「そう、私よ」


サルキスの発言と共に姿を現す影の主、その正体はアンナースであった。


「あらあら、随分とみずぼらしい格好ね、ご自慢の技術も彼等にしてやられたってわけ?」

「ふん……その事を笑いに来たのか?」


眼の前に現れたアンナースの先程までの自身を彷彿とさせる挑発的な口調に少し苛立った様子をみせるサルキス、そんなサルキスに対し


「ふふ、唯笑いに来ただけだと思う?」


と返答する。


「ちっ、技術の流出はなんとしても避けねばならんからな」


そう言うと先にアンナースが走っていき、その後を追う形でサルキスが走っていく。

だがその途中で突然目の前の通路が瓦礫で崩れている光景が見つかる。


「何!?何故此の通路が破壊されている!!此の通路は戦場にはなっていない筈だ」

「……どうやら彼等に寝首を掻かれたようね、こうなった以上、こうするしか無いわ」


通路が崩れている事に動揺するサルキスに対し、アンナースは淡々と銃を構える。

そしてその反対の手には手榴弾らしき物も握られていた。


「それで此の瓦礫を破壊出来るというのか?」


サルキスは疑念と渇望が入り混じった様な口調で聞いてくる、だがアンナースは


「いいえ、破壊するのは瓦礫じゃないわ……」


と冷淡な口調で告げると直ぐ様手榴弾を仕舞い込み、目にも止まらぬ速さでサルキスを銃弾で撃ち、その右脇腹を貫通させる。


「な……何……」


出血と動揺からバランスを崩しその場にふらつくサルキスに対しアンナースは冷血としか言いようがない表情で銃弾を次々と撃ち込む。

そしてサルキスが倒れるとアンナースは


「初めから私はあんたを破壊するつもりだったのよ、サルキス。

あんたが私の故郷にした事は調べがついている、だからずっと此の時を待っていたの。

だからあんたが仮に逃げおおせたとしても私は此処の出口であんたを撃つつもりだった」


と初めからサルキスを殺すつもりであった事を淡々と告げる。

その直後に遠くから足音が聞こえてくるのを察知したアンナースは


「此処で見つかると面倒ね、だったら……」


といい、崩れた瓦礫の上に乗ってその周囲へと壁の裏へと移動する。

一方足音の主、追跡してきた星峰達はそこでアンナースによって撃たれたサルキスの遺体を発見する。


「これは……どうやら一足遅かったみたいね……」


既にサルキスが息絶えている事を知り、一同の表情には落胆が浮かぶ。

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