第821話 サルキスとの激突

「此奴……ブントという組織の歪みを体現しているとでも言うの……」


その傲慢な口調に空狐は内心で苛立ちを感じる。

嘗て自身の一族も此の組織に加担していた故なのか、それとも許せないという自身の中の正義感故なのか、それは最早自身にも分からなくなっていた。

それほどまでにサルキスから受ける傲慢さは異常だったのである。


「さて、下らない井戸端会議は此位にしてお前達にはそろそろ消えてもらうとしよう」


サルキスはそう言うと手元から何かのリモコンを取り出し、そのスイッチを押す。

すると司令室の床が動き出し、瞬く間に一同とサルキスをその下へと移動させる。


「!?此の床がエレベーターだっていうの……」


想定外の事態、そして司令官自身がそれを行うという事態に困惑を隠せない岬、そんな岬を尻目にエレベーターと化した床の一部はその下にある闘技場のような広大な空間へと一同を誘い込む。

そしてそのまま周囲を確認する時間も与えず、サルキスはその背後から現れた大型機動兵器に乗り込んで来る。


「大型の機動兵器……あれも先史遺産の技術で生み出された物なの……」

「その通りだ、最もこれはワンオフモデルのようでな、修繕にずいぶんとかかってしまったよ。

最も、その甲斐あって様々な物を得る事が出来たがね」


臨戦態勢をとり、警戒心を強める空狐の言葉に対しサルキスは余裕綽々といった印象の発言を未だに崩さない。

その兵器が前方のレーザーで攻撃してきたのを躱したのを皮切りに一同は大型兵器との交戦を開始する。


「くっ、狐妖術……赤色の天誅!!」


空狐はそう言うと目の前に巨大な赤い槍を出現させ、その槍を兵器に向かって放ち直撃させる。

だがその槍は兵器に触れた直後に霧散し、兵器へのダメージも与えられていない。


「槍が消滅した!?どういう事なの……」

「貴様達がそれを知る事はない!!」


槍が消滅した事に動揺したのか、空狐はその直後に来た反撃の砲弾を躱しきれず、その身に受けてしまう。


「つっ……動揺させられた……」


急所をずらし受け身をとった事でダメージは余り受けなかったものの、今の一連の流れから嫌な予感は増大していた。


「暗妖格闘……星霜乱舞!!」


岬はそう言うと兵器に接近し、鋭い格闘術を叩き込もうとするがこれも兵器に触れた瞬間にその身に纏っていた妖術を消され、単なる打撃を与えただけになってしまう。

それでも鍛えた身体能力から多少揺らす事は出来たものの、本来のダメージとは程遠い。

更にその直後に来た兵器の反撃である打撃をその身に受け、防御は間に合ったものの吹き飛ばされてしまう。

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