第802話 暗殺術の闇
「あの時から既に人造生命の製造は始まっていた……となると、今まで戦ってきたブントの軍勢の中にもどれだけの人造生命がいるのか……」
「それどころか今、此の瞬間にもこの要塞の中で生み出されているのかもしれない。
今の指揮官をこんな所に投入してきたという事は」
空狐の脳裏には嫌な予感が過るが、涙名の仮設はその空此の予感を上回る危険性を持ったものであった。
「人造生命……先史遺産の中でも忌まわしい物ね」
「今ここでそれを話していても仕方ないよ。それよりも急ごう、この先に」
人造生命という禁忌故か、空狐は明らかに不快感を見せる。そんな空狐を諭す様に涙名は先に進むよう促し、空狐もそれに同意して先へと進んでいく。
だが走破させないと言わんばかりに又人族部隊が出現する、その奥にはまたしても先ほどと同じ人族の指揮官の姿があった。
「全く同じ人族が連続で……やはりこれは人族部隊がこうして作り出されているという事の証明なんだろうね」
軽く発言しているように見える涙名だが、その内心は確実に怒りが込み上げていた。
それを証明するかのように目の前に黒い球体を出現させ、術名を宣言する事もなくその球体から強い引力を発生させ人族部隊をその中に飲み込んでいく。
それを見た空狐は
「え!?どういう事なの……」
と少し困惑した表情を見せる。
そして球体の中に人族を全て吸い込むと涙名はその球体を消滅させる。
「これで先に進めるよ」
涙名がそう告げると空狐は
「え、ええ……だけど今のはどういう事なの?妖術にせよ魔術にせよ発現させるには宣言が必要な筈なのに……」
と涙名に問いかける。
そう、空狐が困惑していたのは涙名が何も宣言すること無く術を発動させた為である。
「どうやらそれが該当しない例外をこの子は教えられていたみたいなんだ。
この子の記憶にそれが刻まれてる。
だけどそれが術の方なのか、それとも可能にする能力なのかは未だに分からない」
「暗殺に使う為の能力って訳ね……」
涙名の返答を聴き、空狐の顔も困惑から怒りへと変わっていく。
「その技術を仕込んだのも又ブントなのよね……」
「この子の記憶を探る限り、ほぼ間違いないと思う。
いや、もしかしたらこの子も……」
そう言いかけて涙名は口を閉ざす。
だが空狐も敢えてそれ以上を言及する事はしなかった、涙名が何を言いたいのか、それは分かっていたからだ。
「八咫の方は大丈夫なのかしら……」
「それを確かめる為にも急ごう!!」
ふと頭の中に浮かんだや他の心配をしつつ、二人は先へと進んでいく。
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