第762話 遺産同士の激突
「先史遺産の兵器を持ち出してきたわね……それだけ魔神族も必至という事なのかしら?」
「それ以前にどうやってここまで反撃してきたんでしょうか?私達の前方にはあの大型要塞がある筈ですが……」
魔神族部隊を見たコンスタリオの呟きに対し、シレットは全く違う角度から新たな質問を投げかける。
「そう言われればそうですね、我々が居るのは要塞の後方、自然に進行して行けばまずは前方にいる部隊が交戦を開始する筈です。
それが無いのにいきなり部隊が……」
シレットの疑問に指揮官が少し動揺した口調で続けるとコンスタリオは
「恐らくは転移妖術を用いたのでしょうね、以前私達は魔神族の魔王がそれを用いていきなり現れたり消えたりしたのを見た事があるわ。
最も、今回それをしたのが魔王なのか、それとも他にも力を持つ者がいるのかどうかは分からないけどね」
と答える。
それを聞いた指揮官は
「なるほど……では我々が後方に待機しているのはその転移妖術を警戒しての事ではないでしょうか?
上層部がそれを知っており、それに対する備えとして……」
と何処か得意げな声を上げるがそれも又コンスタリオの内心には
「確かにそれは考えられる、だけどそうだとすれば全員に通達しておく方が警戒心をより強く持たせる事が出来る筈……にも拘らず何故その事を伝えないの?」
と殊更に疑念を強める結果となった。
その直後、人族部隊も先史遺産の兵器を含めて迎撃態勢を取り、先に魔神族に対して打って出る。
「ちょ、一寸!!いきなり……」
飛び出していったことに対して困惑と動揺の声を上げるコンスタリオ、一方兵士達は
「今の俺達には勢いがあるんだ!!この位どうってことないぜ」
と言わんばかりに魔神族に向かっていく。
だが魔神族の兵士はその猛進ともいえる攻撃を退け、交戦体制に入ると人族を次々と負傷させていく。
それは兵士同士の肉弾戦、術戦だけでなく先史遺産の兵器同士の戦いにおいても同様であった。
同じ技術から転用された筈の先史遺産の兵器であるが、その移動速度も武装の威力も明らかに魔神族側の兵器が上回っていた。
「どういう事だ!?同じ先史遺産の兵器の筈なのに明らかに魔神族側の方が性能が……」
「独自に加えた改良の面では魔神族に分があったという事なのかもしれないわね」
兵器の性能差を目の当たりにして困惑するモイスに対しコンスタリオは考えうる原因を冷静に判断する。
だがその内心では
「にも拘らず、魔神族はあまり兵器をこれまで投入してこなかった……やはり危険性は承知しているの?」
と更に内面の疑念を強める。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます