第761話 勝利への濁流

コンスタリオが内心に疑念を抱くとほぼ同時に指揮官の通信機に通信が入ってくる。

指揮官がそれに対応すると


「……了解しました、では、そのように行動致します」


と告げ、通信を切る。


「何があったんですか?」

「前方と左右より徐々に魔神族部隊が接近しつつあると言う事です。

故に要塞内の追加戦力を其方に投入する為、我が隊も警戒を強める様にと指示がありました」


シレットの問いかけに対し指揮官がこう返答するとコンスタリオは


「やはり妙ね……どうして背面の戦力を他の場所の応援に行かせないのか……

それだけこの部隊が虎の子と言う事なの?」


と更に疑念を深める。

一方、魔神族が迫っていると言う事を示しているのか、周囲から聞こえる交戦や爆発音が徐々に大きくなってくる。

それを聞いたモイスが


「おい……段々迫ってきてるみたいだぜ」


と言うと指揮官は


「どうやらその様ですね、ではそろそろ要塞が動くでしょう」


指揮官の一言に妙な違和感を覚えたコンスタリオが口を開こうとした次の瞬間、要塞から複数の砲弾が放たれ魔神族部隊を直撃する。

その銃弾の爆発は地面を抉り、魔神族部隊を吹き飛ばす等これまでに使われてきた砲弾とは桁違いであった。


「今のは一体……それにあの爆発じゃ……」


爆発の規模に困惑するシレットの声を無視するかの様に要塞を中心とする人族部隊は更に侵攻を進めていく。

コンスタリオ小隊も止むを得ず、その流れに沿う形で侵攻に加わっていくが、その内心はやはり疑念に満ちていた。


「この巨大要塞……さっきの砲弾……やはりこの侵攻部隊、何かが可笑しい……」


コンスタリオの疑念は時間が経過する毎に増していき、それが空気に乗って伝わっているのかシレットとモイスの顔も重い物になる。

一方、人族部隊の侵攻は先程の砲弾を皮切りに再び勢いを取り戻しつつあり、先程魔神族が立ち塞がった場所をいとも容易く通り過ぎていった。


「ここでさっき彼女が出てきた……このまま侵攻が上手く行くと思いますか?」


シレットがこう尋ねるとコンスタリオは


「いいえ、とてもそうとは思えないわ。

そもそもさっきの彼女がここに来るまでに姿を現さなかった、その時点で既に怪しさを感じざるを得ないもの」


と言い、この戦いがこのままで終わる訳がないと言う事を予感していた。

その予感が的中したのか、再び魔神族部隊が目の前に現れる。

今度は先史遺産の兵器も戦力として投入しており、魔神族部隊も又余裕がなくなってきている様に見える。

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