第735話 覚醒の代償
モイスがそう解説している間にもシレットの閃光の如き動きは続き、兵器はあらゆる個所に貫かれた穴が開き、今にも大破しそうな状況になっていた。
「これで……止め!!」
シレットはそう言うと両手の剣を一つに合わせて一つの巨大な剣とし、その剣を振り下ろして兵器を完全に両断する。
両断された兵器はその場に完全に崩れ落ちるがその直後シレットの周囲を渦巻いていた魔力の渦も消え、シレットも又その場に崩れ落ちる。
「シレット!!」
コンスタリオとモイスが慌てて駆け寄るとシレットは
「は……はは、やりましたね」
と一瞬気が狂ったのかと思う様な声を上げる。
シレット本人としては何気なく言った一言なのだがそれを聞いたモイスは
「やりましたねじゃねえよ!!お前、体は大丈夫なのか!?」
と心配を声にも行動にも隠さない。
自身にも経験があるが故なのだろう、それに対しシレットは
「ええ……大丈夫よ……」
と言うと立ち上がろうとするがその体はふらつき、最早直立するのもおぼつかない状態である。
「何が大丈夫なのよ……」
あからさまな虚言を聞き、コンスタリオは泣き崩れそうになる、だがそこは部隊長としての信念なのか涙をこらえ、シレットの肩を担いでその場から移動していく。
もう一方の肩を支えたモイスも又、シレットを必死に動かしていくのであった。
その一部始終を見ていたが故なのか、輸送対象を警護している少数の現地部隊も特に何も口にする事なくその場から移動していく。
幸いにも出口まであと少しだったこともあり、更なる襲撃は受けずに済んだ。そして出口に辿り着くとコンスタリオが呼び出した飛空艇に輸送対象を積み込む。
その積み込みが終わると現地部隊は
「皆さん、今回の警護任務、本当にありがとうございました。
我々はこれより森の中に戻り、魔神族と交戦している司令官部隊の支援に向かいます」
とコンスタリオに告げる。
それを聞いたコンスタリオは
「分かったわ、後は任せて。
本来であれば私達も向かいたいのだけど……」
と後ろ髪を引かれる口調でそう告げる、それに対し部隊代表者は
「いえ、皆さんにはここからの警護をしてもらわねばなりませんし、それに彼女の容態も心配です、命に別状はないようですが……」
と告げる。
部隊代表者とコンスタリオが会話するその場にモイスとシレットの姿は無かった。
シレットの容態を心配したモイスが輸送対象よりも先に半ば強引にシレットを飛空艇に乗せていったからである。
「ええ、シレットがあの状態である以上、正直これ以上の戦闘継続は難しい、だからお願いするわ」
コンスタリオはそれだけを告げると飛空艇を動かし、その場から離脱する。
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