第733話 過去との別離

その間にも兵器は輸送部隊を攻撃し、コンスタリオの魔力を確実に擦り減らしていく。


「くっ、このままでは何れは……」


コンスタリオの表情に陰りと焦りが見え始める、それを見たモイスは


「くっ、少し時間を稼げればあれで……」


と内心で思うのだがそんな事を兵器が許す筈もなく只手元の銃を撃っていく以外に打開策を見出せずにいた。


「隊長、このままでは隊長が……くっ」


シレットはそう言うと兵器に対し雷撃を浴びせるがそれらは全てバリアで塞がれ、更にその攻撃がシレットの位置を教えてしまったのか兵器はシレットに対し攻撃している箇所とは別の箇所からレーザーを放ち、その爆発にシレットは巻き込まれてしまう。


「シレット!!」


モイスがそう叫んだ時、シレットは既に負傷していた。

致命傷でこそない物の、傍目から見ると治癒が必要なレベルである。


「くっ、まだ私は……」


それでも尚シレットは立ち上がろうとするがその姿を見てコンスタリオが


「シレット、無理は……」


とシレットの方に気を取られ、集中力を乱したが故なのかマジック・ウォールに亀裂が入ってしまう。


「!!しまった、このままじゃ……」


コンスタリオは慌ててマジック・ウォールの亀裂を修復しようとするものの、既に入ってしまった亀裂を突かれたダメージはそう簡単に凌げる物ではない。

その光景を見たシレットの脳裏にはある風景が過る。

それは幼い時、居住していたタウンが魔神族の襲撃を受けた際の光景であった。

燃える街、襲い来る魔神族に只逃げるしかなかった幼き日の自分、そんな風景が脳裏に過り、更にその直後に放たれた妖術から自身を守ろうとする大人達……

その大人達が誰なのか、それは最早シレットには思い出せなかった、親なのかもしれないし、親戚、あるいは軍隊なのかもしれない。

だが脳裏を過るその光景を思い出しながらシレットは


「このままじゃ、また……私は何も……そんなのは嫌!!

それをしたくないから私は!!」


と自身の無力さを思い出させるその光景に対し叫び声をあげそうになる。

だが次の瞬間、シレットの周りに魔力の渦が巻き起こりそれにシレットは飲み込まれていく。


「お、おいシレット、その魔力の渦は……」


その光景を見たモイスが慌てた口調で魔力の渦を指摘する、その指摘の仕方は見た事がないという感じの指摘ではない、寧ろ見た事があるが故に困惑しているといった感じの指摘であった。

その魔力の渦はコンスタリオの目もやはり引きつける。

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