第715話 その心が示す先

其れを見届けたコンスタリオ小隊が


「さて、じゃ私達も戻りますか」


そう宣言して帰路に着く。

その道中、シレットが


「まさか彼等も介入してくるなんてね、正直予想外ではあったけど、不思議と悪い気はしなかったわ」


と漏らすと


「ああ、兵器が進行してきたと聞いて俺達も出撃を志願したが、まさかそこで彼等と出会う事になるとは正直思わなかった」


とモイスも同調する。

二人の、否コンスタリオ小隊の天之御達に対する印象は明らかに変化していた。少し前までは奴等と表現していたのが今は彼等になっているのがそれを証明している。

彼等自身がそれに気づいているのかどうかは定かではないが。


「それはそうと、あの兵器と司令官、それに彼等の介入行動、恐らくはあの兵器の背後に何者かの意図が関与しているのでしょうね」


コンスタリオがそう発言すると先程まで少し明るかったモイスとシレットの表情も少し硬く真剣な物になる、それ程先史遺産の兵器については神経質になっているのだろう。


「ええ、もし彼等が介入してきてくれなかったら、そしてあのシェルターに向かってくれなかったら現地住民の半数近くが兵器の手で殺されていた事でしょう。

いえ、兵器の手ではあってもミラノタウンの司令官の意図によってという面もありますね」


シレットがそう告げたのは単なる勘ではない、そう考えなければ辻褄が合わない事態が民間人族の口から告げられた事はその仮説に少なからず影響を与えていた。


「ああ、現地住民を見殺しにしようなんてどういう了見だ?」

「恐らく、自分達にとって都合のいい民間人族だけを生き残らせようとしたのでしょうね」


モイスの疑問にコンスタリオは即答する、だがその声には確実に怒りが満ちていた。

一部の神族しか守らないなど防衛部隊の司令官としてあるまじき姿だからだ。


「だから彼等に司令官の元に向かってもらったのだけど、その後の彼等の様子からして恐らくその判断は正解だったのでしょうね。

司令官がどうなるのかは分からないけど」


コンスタリオがそう告げるが、その声は心配しているというよりもどんな罰が下るのかと言う事を考えている様にも聞こえる。

そうこうしている内に飛空艇は拠点に戻り、コンスタリオ小隊は何時もの様に一通りの報告をしたのち自室へと戻っていく。

但し、司令官には彼等の介入や現地住民の暴動については伝えなかったが。

一方、天之御達は何時ものブエルスではなく、出撃直前までいた施設に戻っていた。

其処を拠点としている霊諍が居たからである。

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