第705話 手を差し伸べる魔王

そのあまりに凄惨な光景はその場に避難していた民間人族は勿論の事、駆けつけた星峰達の内心も暗く沈んだものにする。

負傷した民間人族、それを見たり襲撃を受けたりして泣き叫ぶ人族、全員がこの光景に心身共に少なからず傷を負ったのは想像に難くなかった。


「酷い……一体どうしてこんな事を……」


涙名が半ば呆然としながらそう呟いた次の瞬間


「魔王妖術……再世の闇明!!」


と天之御が妖術を発動し天から漆黒の闇を降り注がせる。

そして地上の負傷した人族や破損した建物に闇が触れるとその建物や人族の傷は直ちに癒え、もう手遅れかと思われていた人族の傷も治癒されていく。

そして闇が消えた時、そこは何事もなかったかのように元通りになっていた、最も、襲撃された後しか知らない一同には本当にそれが元通りなのか否かは分からないが。


「う……私達は襲撃されて……なのに」


手遅れかと思われていた人族が目を覚まし、その場から起き上がっていく。

それを見た天之御達はその場から早々に立ち去ろうとするがその前に住民が


「魔人族!?魔人族が何でこんな所に……」


とその姿を肉眼で確認し大声を挙げる、その声には明らかに困惑が混じっていた。

すかさず身構えようとするがそこに先程星峰が救助した民間人族が姿を見せ


「待つんだ!!彼等は確かに魔人族だが今我々を助けてくれたのは紛れもない彼等だ、私達が証人となる!!」


と住民と一同の間に割って入り


「ええ、間違いありません!!」

「私も助けてもらったよ」


とその住民の妻と娘もそれに続く。

その光景を見た民間人族は


「貴方は……貴方がそういうのであれば分かりました。

どの道私達に直接戦う術はありませんしね、それに……」


と告げ、その警戒を解く。

それを確認すると一同は黙って本来の目的地である司令官の居る施設へと向かうのであった。

一方、中心部に残って奮戦していたコンスタリオ小隊は中央エリアに集まっていた先史遺産の兵器を一掃し、戦場のエリアを移動していた。


「中央に集まっていた兵器は一掃出来ましたが、それ以外の場所はどうなっているのでしょう?」

「それを確かめる為にも動くわよ!!」


シレットがポツリと呟いた疑問に対し、コンスタリオははっきりとそう告げる。

その直後近くで爆発音が響き、それを聞いたコンスタリオ小隊は一目散にその場へと向かう。

そして爆発音が聞こえた現場に着くと、そこでは人族部隊がシェルターを背にして先史遺産の兵器と交戦していた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る