第698話 渦巻く影

「殿下の妖術で検証しても反応が無かったところを考えると、この技術は人族側を中心に用いられたか、或いは暴発を防ぐ為に敢えてそのレベルの妖術でも反応しない様にしているのか、そのどちらかだと考えられます」

「その点も気になるけど、先日コンスタリオ小隊が抗戦した兵器がそれを起動させていたというのが一番の問題点ね。

少なくとも一部の兵器はこの技術を起動させている、もしその起動方法までも判明しているとしたら」


霊諍が続けて語った疑問に対し、星峰が更に重ねる形でそう続ける。

その疑問は他の面々も同様らしく、星峰の言葉に深刻な表情を見せていた。


「何者かが意図して起動した可能性も十分考えられます、ですがそう考えた場合、一つ妙な点がありませんか?」

「妙な点?」


妙な点という言葉に反応し、八咫が引っ掛かりを覚えた様な口調を差し挟む、だが天之御や星峰は例によって気付いているらしく、その表情に変化が見られない。


「何故今回コンスタリオ小隊が向かった先の兵器がそれを起動させていたか……だね」


天之御のその言葉に星峰も首を縦に振り、同じ事に対して疑問を抱いている事を確信する。


「そうか……今回の一件は明らかにブントがコンスタリオ小隊を巻き込んで行った作業、にも拘らず兵器の技術が起動していた。

だけどそれでは自分達同士で潰し合う事になるだけ……いえ、ブントの三文芝居は今に始まった事ではないけど、兵器を用いてそれをやる理由は無いわね」


天之御の言葉で確信したのか、空弧もこう口にする。


「そう、そしてあの草原地帯はブントの息のかかったエリアです、其れを踏まえた上でブントが権力抗争でもやっているのではないとすれば、残るは……」

「最初から起動していたか、或いは全くの部外者が悪意を持って起動させたか。

先史遺産の遺跡であれば那智街の亡霊のようなケースもあるから考えられなくは無いけど……」


霊諍の言葉に続く星峰の言葉には一応の結論は出ている者の、声の強さからはその結論よりも寧ろ他の結論の方が本命であると思わせる様な口調であった。

其れに気付いているのか、それともそうでないのかは不明だが、他の面々の顔も星峰と同じ様な印象を受ける。


「ええ、実を言うと僕も同じ意見です。

なのでその可能性も含め、検討しています。なので皆さんも……」


霊諍がそう言って話を終わらせようとしたその時、突然施設内に警報が鳴り始める、しかもその音は星峰は今まで聞いた事の無い音であり、他の面々もざわつき始める。

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