第697話 切り替わる転移

「ねえ、一寸……それって……」


霊諍の発表を聞いた一同は明らかにざわついた様子をみせる、其れもその筈である。何しろ昨日の作戦でコンスタリオ小隊が交戦したという兵器が正にその技術に当てはまっているのだから。


「その様子だと既に皆さんの中に心当たりがあるようですね、ですがこの技術の更に厄介な点はそこではなく、外部からの何らかの干渉により任意で機能のスイッチを切り替える事が出来るという点にあります」


霊諍はざわつく一同に対し、更にこう告げる、其れを聞いた豊雲が


「何らかの干渉により任意で……つまり、自由自在に切り替える事が出来るという訳ですか……」


と答える。


「そういう事になります、その為、これまで作動していなかった機能がその干渉によって作動し、一気に街中を大混乱に陥れる、そんな事態も想定出来ます」


そう話す霊諍の言葉を聞き、星峰と天之御は一層深刻な表情を浮かべる、彼等が昨日の夜何より懸案していた事が正に起こり得ると言う事がこれで決定的になってしまったのだから。

その表情から深刻さが伝わるのか、他の面々の表情も一層険しい物になる。


「その干渉の方法はまだ分かっていないの?」

「残念ながら正確な部分までは……ただ、ある特定の魔術又は妖術で反応すると言う事、そしてそれは誰にでも扱える様な術ではないと言う事は判明しています」


天之御の質問に対し霊諍はこう答える、その返答に一同は安堵とも不安ともとれる、或いはどちらとも取れない複雑な表情を浮かべる。

今直ぐにそれが起こり得るわけではないと言え、起こり得る可能性が低くなったという訳でもないからである。


「その誰でも扱えるという訳ではないという根拠はあるの?」

「ええ、今回の一件が判明した後、僕達は既にデータのある全ての妖術、魔術のデータとこの兵器に用いられている技術を検証しました。

その結果、少なくとも現時点でデータがある全ての妖術、魔術にこの技術は反応しませんでした、特に誰でも少し訓練すれば扱えるような術は特に重点的に調べましたがその反応は全くありませんでした」


星峰の問いかけに対し霊諍は明確にそう返答する、その返答と言葉の強さから一同はそれが事実であり、又霊諍もこの兵器の技術について重く受け止めている事を察する。


「全ての魔術、妖術と言う事は殿下の妖術も含めてなの?」

「ええ、殿下の妖術も失礼ながら検証させていただきましたが、反応は他と同じ、ピクリともしませんでした」


空弧の問いかけに対し霊諍はこう返答し、その返答を受けた空弧は何処か安堵したような表情になる。

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