第695話 深き暗部
「転移能力を持つ兵器自体は既に私達も確認している、だけどこれまでのそれはあくまで外部からの干渉や防衛の為につけられているに過ぎなかった。
だけど今回は明らかに当初から追撃の目的で使用されている」
「その事から考えるとその装置を付けた奴は先史遺産の技術が狙われていると言う事を承知の上で仕掛けてあると考えてまず間違いない。
最悪の場合、もしその防衛対象が街中に保管されたりしたら……」
「街中に先史遺産の兵器が出現し、大混乱に陥る危険性もあるわね」
先程見せた笑顔を早くも曇らせる星峰、そして天之御も又それに釣られたかの様に表情を曇らせる。
それは決してこの話が行き過ぎた、飛躍した仮設などではなく、現実的に起こり得る事であるが故に警戒心を持たせるという心境の表れであった。
「今回ブントは先史遺産を態々拠点となる場所に移動させていた、此れは単なる戦力集中の為なのか、それとも何かの罠か、別の狙いがあるのか……
考えられる事は色々あるけど、どれも正解とは言い難いわね……」
星峰の言葉は仮説に自身が無いという意味ではない、様々なケースが考えられるが故にどのケースが当てはまるのか想像が出来ないのである。
「兎に角、今後は此方で保管している先史遺産の管理にも注意を払う必要があるね。
万が一取り返しに来る自立機動兵器が来たりしたら大変な事になる」
天之御もそう続け、先史遺産という物の暗部を改めてその内心に実感する。
「こっちについては今の所ここで話していても仕方ないわね、其れよりも私はコンスタリオ小隊に対する返信を打ち込んでおくわ。
そして、例のデータの解析もね」
「ああ、頼んだよ。
もし兵器の転移技術について何か分かれば今の懸念に対する対策も討てるかもしれない」
星峰に対し天之御はそう告げると部屋から出ていき、其れを見送った星峰は
「自分の中の葛藤……か」
と先程の回答を今一度自分に言い聞かせるように呟き、その後コンスタリオ小隊への返答を打ち込む。
そして時間は流れ、翌日の朝になった時、ブエルスの城内に放送が入る、返答を討ち、そのまま眠りに落ちてしまった星峰がその放送で目を醒ますと
「直ちに謁見の前に集合して下さい」
という放送の一部分が聞こえてくる、其れを聞いた星峰は早速身支度を整え、謁見の間へと向かっていく、そして謁見の間に着くと既にそこには豊雲も含めた面々が揃っていた。
「皆揃ったようだね、こんな朝早くから集まって貰って申し訳ない」
そう語る天之御の顔はすまなそうだが、同時に何かあったと思われる神妙な表情も見え隠れしている。
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