第693話 星峰の疑念と疑問

「ええ、コンスタリオ小隊から送られてきた通信をそのまま読むとそういう事になるわ、そんな事が起こり得るのかどうか分からないけど……」

「分からないじゃない、起こり得るよ」


星峰が珍しく疑問形の言葉を零すが、それに対し天之御は明確に事態を肯定する返答を返す。


「起こり得る?魔力が武装を強化すると言う事が?」


肯定する発言をした天之御に対し、尚も問いかける星峰、その返答が相当な予想外だったのだろう。

その声の音程にも星峰らしからぬ動揺が感じられる。


「そう、起こり得る。

父に協力していた魔神族の将軍は何人もそれを行っていた、それに僕も、空弧達も、否、そもそも星峰だって其れを行っているじゃない」


続けて天之御があっけらかんとした口調で語った言葉は星峰を更に困惑させる、星峰自身にはそんな事をしている自覚は全く存在していないからだ。


「私がそれを行っている!?一体どういう……」

「君が使っている弧妖剣術、あれは正に今回の件に該当する能力だよ。

君の剣に妖力を注ぎ、その力を向上させているんだから」


動揺する星峰が更に問いかけると天之御はその理由を説明する、其れを聞いた星峰は確かに部分的には納得するものの、それでも


「確かにあれはそういう意識を持っていたけど……それでも今回は……」


と武器そのものが変貌したと言う事についてなのか、それとも他に何かあるのか、まだ細部には納得出来ない部分があるような口調を見せる。すると天之御は


「確かに君の場合は武器その物は変化していない、だけど原理としては同じだよ。

妖力を注ぎ込んで武器の能力を向上させているのも、そのモイス君っていう子が今回やった事も」


と答える。


「僕が見たのは妖術ばかりだったけど、妖術も魔術も元を辿れば同じルーツに行き着くんだ、別にあり得ない話じゃない」

「だけどモイスは魔術を使う事は出来なかった……其れなのに何故……」

「その子が使えなかったのはあくまで魔術を使う能力であり、魔力を持つ事自体は出来ていたのかもしれない、其れも魔術として放つことが出来ない分、寧ろ強力な力として眠っていた、そう考える事は出来るよ」

「その力が武器の変貌という形で顕現したと言う事なの……」


天之御の口から行われる解説に星峰は只驚いていると言った印象の顔を浮かべる、それ程モイスと魔力がこれまで縁遠い存在だと感じていたのだろう。


「そう考えるのが妥当な線だと思う、そしてその顕現した形はその人物の内面の何かを反映した形になると言われているんだ」


天之御は更にそう続ける。

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