第653話 自作自演の侵攻

兵士の表示した地図には人族、魔神族双方が映し出され、その侵攻コースも容易に想像出来た。確かに両軍はオペールタウンを目指して侵攻しているのが確認出来る。


「この動き……確かにオペールタウンに向かって侵攻している様に見えるね、だけどこれは……」


その地図を見て涙名はふと聞いただけでは奇妙と言える発言をする、だが同じく地図を見ていた星峰と天之御はその真意に気付いたようである、その言葉を聞いた後に浮かべた顔がそれを物語っていた。


「確かにね、オペールタウンに向かっているのなら両軍が同じ方向から移動しているのは不自然すぎる。

だとするとこれは……」


天之御がそう言うと星峰も


「本当の狙いはオペールタウンではなく、その周辺にある……」


と言葉を続ける。


「つまり、オペールタウンへの侵攻はカモフラージュと言う事ですか?」


空弧がそう問いかけると天之御は


「そういう事になるね。両軍の移動先の中心に位置するならオペールタウンが本命なんだろうけど、双方が交差するであろう場所がそこじゃない、その周囲にある施設エリアだと考えるとね」


とその根拠を説明する。


「先程人族部隊に通信を試みましたが部隊の通信は繋がっていない様です。恐らくは隠密行動を口実に通信を切断しているものと考えられます。

又、その部隊にコンスタリオ小隊が加わっている事も確認出来ました」


人族協力者がそう告げると一同は一斉に星峰の顔を見る、その言葉の中に含まれた板コンスタリオ小隊という言葉を一同は聞き逃さず、且つ星峰の心境を考慮したためだ。

だが星峰の表情は何時もの困惑した表情ではなく、寧ろ確信を得た笑みを浮かべていた。


「星峰……どうしたの?」


天之御がそう問いかける。それは天之御ですら星峰の笑顔の意味が読めずにいると言う事を意味していた。


「分かったわ、ブント部隊の侵攻先が。恐らくはオペールタウンの北部にある施設エリアよ」


星峰がそう告げると一同は改めて地図の上に表記されているそれぞれの部隊の侵攻予測ルートを確認する。すると星峰の言う通り、確かにオペールタウン北部を目指している事が推測できる。


「一体どういう事?そこに一体何が……」

「ブントにとって見られたくない物があるって事は確かだと思う。だから両軍の激突を装って隠滅を図ろうとしているのかも」


ブントの狙いが分からず困惑する岬に対し涙名は目的の仮説を説明する。

その意見に対しその場に居る全員が首を縦に振った、否縦に振らざるを得なかったというべきだろうか。

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