第648話 その違いは多少?多大?

「どこもかしこも同じ様な内装の部屋……人が生活する様な空間とはまるで思えません」


岬のその言葉が全てを物語っていた、それ故に部屋の調査自体は早々に終わり、残るは通路の一番奥にある扉一つとなっていた。


「ここが最後の部屋ね……と言っても雰囲気はこれまでの部屋と変わらない。

只、一応警戒はしておいた方がいいかもしれないわね」


星峰のその言葉に一同の警戒心は強まる、星峰がこうした発言をするときは大抵の場合直後のその言葉が的中するからだ。

そしてその星峰が扉を開けるが、そこに広がっている光景もこれまでの部屋と何ら変わる所は無かった。


「この部屋も特に他と違いはないわね、と言う事は機器の中身も……」


星峰の警戒心が外れた為か肩透かしを食らったかのような発言をする空弧、だが直後に星峰が


「いいえ……少しだけ違う部分があるわね、この機器内に」


と告げ、一瞬緩みかけた警戒心が再び強まる。

そして星峰が機器を操作し、その違うと指摘した部分を表示する。

そこにはこの施設内で活動する職員がつけたと思われる日誌の様な記述が書かれていた。


「本日はこの施設内において例の技術の確立に成功した、これにより今後の戦況が少なからず動く事は間違いないだろう、後はこれをどう量産し発展させていくかだが……」

「例の亡霊技術をまだ諦めていない連中がいる様だ、不安定な亡霊よりも兵器の開発を優先すべきだというのに……」

「例の亡霊施設で事故が発生した、恐らく被験者は助からないだろう。

そしてその後始末に追われる、まったくあの連中にも困ったものだ、身体能力を無理やり強化するだけでなくその魂まで利用しようとは……」

「亡霊の残党は未だ徘徊している様だ、最も、兵器に恐れをなしたのか殆ど見かける事は無くなったが」


星峰が読み上げた日誌の様な記録はどれも実験や兵器について書かれており、且つその内容は此処までに調べた部屋には確かに記載されていなかった。


「記載されている内容が他の部屋より詳細だな、となるとこの部屋は……」

「現場責任者の部屋って所かしらね、日誌の部分以外に相違点は見られないから相当な上層部という訳ではなさそうだし」


八咫と星峰が出した結論に異を唱える者は居なかった、それ以外説明がつかないからだ。


「それにしてもこの内容、どうやら兵器開発に関わっている側のブントは八咫が言っていた兵士の能力開発には否定的な立場の様ですけど……」

「大方不安定な生命より兵器の方が安定している、そんな所でしょうね」


岬が告げる疑念に対し星峰は呆れた様な物言いで言い切る。

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