第626話 アンナースの鬱屈

「全く……反省と言う物をしないのね。迂闊に兵を派遣して調査したから今回の事態を招いているというのに。

その中に私達の部隊の構成員は入っているの?」

「いいえ、如何やら部隊の編成を決めた者はその点は考慮していない様です」

「考慮していないというより、手柄を取られたくないから意図的にした……つまりはそういう奴が部隊編成をしたと見るべきね。

仕方無い、此方から圧力をかけて強引に滑り込ませましょう。監視の意味でね」


アンナースの声は終始呆れている様に聞こえる、それは司令官も同様であった。

如何やらこの点についてはアンナースも中央は問題であると考えている様だ。


「では、早速部隊編成をした者を特定します」

「頼むわね、これ以上彼等に疑念を抱かれれば此方の計画も大幅な修正を余儀なくされる。それだけは避けなければいけないのだから」


そう言うとアンナースは司令室を後にし、その足で何処かへと向かっていく。

その行く先は自分の部屋であった。

部屋の中に入るとアンナースは


「やれやれ……イェニー様も相当だったけど、中央の権力闘争はいい加減どうにかしないとね。このままでは本当の意味で彼等を取り込めなくなる。

嘗ての私がブントに忠誠を誓うきっかけとなったあの出来事の再現を行う為にも」


と呟く、その表情は複雑な物であり、彼等と言う言葉が差しているであろうコンスタリオ小隊についての自身の思いを吐露している様にも見える。


「彼等がブントの秘密に気付く様な事があればイェニー様の、ブントの築き上げてきた物が全て崩壊の方向に行きかねない。その為にはまず、彼等が連絡を取っているスターと言う人物をどうにかする必要がある。一体その人物は何処に……」


アンナースが続けてそう呟く。如何やらブントはスターの詳細については把握していない様だ。

それを調べる為なのか、アンナースは部屋の端末を起動するとスターについての情報を探り始める。


「スター・ボレード、コンスタリオ小隊の構成員、ブエルス陥落作戦中に突如として行方を晦まし、その後魔神族に体を奪われていた事が判明、ここまでは出ているのだけどそこから先が出てこない。

恐らくは魔王の近くに居る事で情報が遮断されているのでしょうけど、だとしたらコンスタリオ小隊に情報を提供するのはどうやって……いえ、魔王に協力しているのなら有り得るわね」


画面を見ながらぶつぶつと独り言を漏らすアンナース、その声には少なからず不満が混じっているように聞こえる。

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