第620話 混ざり合う脅威
「下手に長居をするとブントの部隊まで大挙してくるかもしれない。そうなればここは泥沼になり、調査どころではなくなってしまう。
此処は一旦離脱して次に繋げる事を優先しよう」
天之御はそう告げると同時に転移妖術を発動させ、その場から一同を離脱させてブエルスに帰還する。
「今回の一件でブントがまだあの施設の全てを手中に居る訳ではないと言う事が明確になったわね、そして……」
「うん、まだ僕達にも反撃と奪還のチャンスは残されてる。これ以上あの施設をブントに渡したままにしておくわけにはいかない」
ブントに帰還して早々に星峰と天之御は強気な口調でそう語る、その言葉の強さは内に秘めた決意の強さでもあった。
「勿論、次の調査までそんなに間を開ける気はないよ。もたもたしていると奴等が次にどんな手を討ってくるか分からない。
それに音信不通になったんだと分かればブントも次なる部隊を送り込んでくるはず、そうなればまだ手中に収められていないエリアを狙って来るかもしれない」
「時間的な余裕はありませんね……果たしてブントがどう動いてくるか……」
ブントの次なる動きという懸念材料を持ちつつも星峰達は次の調査に向けての準備を既に始める必要性がある事を感じていた。
それ故に傍から見ると焦っている様にも思える。
「それは分かるが、今はまず身柄を拘束したブントの兵士から何か情報を聞き出せないか考えた方がよくねえか?今回のブントは人族と魔神族が混成した部隊が派兵されていた、その点が俺には気になる」
星峰と天之御の発言に対し八咫が唐突に割って入る、だがその内容は至極真っ当な正論であった、先程の施設の中の会話で星峰が自信を諭すような発言をしたことに対する御返しなのだろうか?
八咫の発言を聞いた星峰は
「そうね、確かにその線も考えた方がいいのかもしれない。ブントが混成部隊を送り込んでいたと言う事は何処かでその混成部隊が構成されていると言う事、しかもそれは双方の表部隊に知られない形でね」
と八咫の発言を発展させる形で仮説を出し、且つその仮説が当たっていた場合の危険性を思考していた。
「ブントに混成部隊が居ると言う事はつまり、お互いの情報が筒抜けになる箇所がどこかにあると言う事、逆に言えばそこを突く事が出来れば……」
「ブントの存在を白日の下に晒し、この戦乱を一気に終息に向かわせる事が出来るかもしれないって事だね」
涙名と天之御がそう口を揃えて言う。それはこんな邪な形でなければどんなに良い事かという気持ちの表れでもあった。
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