第593話 星峰でも分からない事

「そして彼等の考え方からすると恐らくこの一件で疑念は更に強めたと思うわ。

最も、それが吉と出るか凶と出るかは今後の私達次第だけどね」


そう語る星峰の口調は一見平常に戻っているかのように見える、だがその喋り方には明らかに嬉しさが見え隠れしていた。


「その疑念を吉にする為にも今は休んで近日中の施設侵攻に備えておいて、具体的な日程は追って連絡するから」


天之御のその一言でその場はお開きとなり、集まっていた面々は自分の部屋へと戻っていく、だが只一人、空弧だけは自分の部屋ではなく星峰に同行し彼女の部屋に入った。


「私と一緒に来たって事は、やっぱり話したいことがあるの?」


星峰の問いかけに空弧は


「ええ」


と短く首を縦に振る。どうやら星峰も空弧が何かを話したいのは直ぐに察した様だ、恐らくはその内心も何を話したいかも検討はついているのだろう、其れを聞くとすかさず空弧に


「で、何から話せばいいの?それとも聴けばいいの?」


と問いかける。


「今回の作戦でコンスタリオ小隊のメンバーだったシレットって子、あの子に若干の焦燥が見られたわ。隊長さんが諭さなければ私も彼女の攻撃の巻き添えになって三つ巴の混乱状態になっていたかもしれない」


空弧の口から出た言葉に星峰は思わず驚嘆した顔を浮かべる、恐らくシレットがそうした行動に出る事は全く予測していなかったのだろう。それを証明するかのように


「シレットらしくないわね……彼女も普段は冷静な方なのに……やはり故郷が狙われたのと疑念が混ざり合って冷静さが発揮できなくなったのかしら?」


星峰はそう語るが、その語りは空弧というより自らにそう言い聞かせている様にも見える。だが空弧は


「この様子だと……星峰は気付いていないのかもしれないわね。いえ、そう考える方が自然なのかもしれない」


と内心で何かを考えている、どうやらシレットが錯乱した理由に心当たりがある様だ。


「もしかしたら……嘗ての貴方の体を使っている私だからかもしれないわ」


空弧はそう言って自分の中にある疑問を星峰に話す、だが星峰は


「嘗ての私の体を使っているから……どういう事なの?既にその事は承知している筈よ」


と空弧の質問の意味を理解しきれていない様子をみせる。


「……そうね、考えすぎかもしれないわ」


そう言って空弧は自身の発言を引っ込める、だがその内心では


「私が言いたいのはあのシレットって少女は貴方の事が……と言う事なんだけど……そっち方面の話は鈍いのかしら……」


と何か思う所があるようだ。

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