第591話 反攻の糸口

「コンスタリオ小隊を待機させたのは恐らくこれ以上疑念を抱かれるのを避けたかったんからだろうけど、既に抱いている疑念を消す事は出来ない。

だから取り敢えず待機と言う形にはしたんだと思う」


そう説明する天之御の言葉に星峰も頷き


「天之御の考えで間違いないと私も思う。

コンスタリオ小隊の考え方からすれば恐らく既に生じている疑念を解消するべく行動する可能性が高い、そんな状況下で見てみぬふりをするのは余計に疑念を深めるだけだもの。

そして、それを予測した上で今回の事態に対処した、そんな所でしょうね」


と続ける。


「今回の一件、恣意的な物か偶然か……どっちだと思う?」


八咫がそう星峰に問いかける、すると星峰は


「現時点では可能性は半々と言ったところね。恣意的に狙ってきた可能性もあるし、前回同様に偶然が重なったという事も有り得る。

前回の湖の件から考えてもブントも転移通路の全てを把握出来ているという訳ではないようだからそれぞれの移動先を現在調査中であると考えても不思議ではないわ」


と現時点での見解を口にし


「僕も同じ考えだよ、ただ、これだけ色々な所に通路が通じているとなるともしそれの全てがブントの手に落ちたりしたら大変な事になる。それだけは何としても避けないといけない。そう考えると……」


と天之御も言葉を続ける。


「ええ、万が一にも世界中何処にでも繋がっているなどと言う事になればブントの商売はこれまで以上にやりやすくなる上に恐ろしい事になるのは間違いない。

それに、このブエルスに繋がっている可能性だってあり得るんだ」


涙名がそう続けるとその場に居た面々の顔は一層引き締まる。

だがその時八咫が


「だが……もしそうだとしたら難しい話ではあるが、それを先に見つける事が出来れば此方が攻勢に出る事も可能じゃないか?」


とふと呟く。それはその場の軽い思い付きでしかなかったのかもしれない、だがそれを聞いた天之御ははっとした表情を浮かべ


「成程、そういう考え方もあるね。気付かなかったよ」


と八咫に感謝の言葉を述べる。それを聞いた八咫は


「い、いえ……勿体無いお言葉です……」


と少し照れ隠しをした返答をする。最も、全く隠せてはいないのだが。


「必要以上に不安を煽りたくはないけど、考えられはする以上、ブエルスの住民達にも協力を要請して不審な点が無いか日常生活の範囲で構わないから調べてほしいと連絡しておくよ。ブントへのけん制も兼ねてね」


涙名もそれを了承し、ブントへの反攻の決意を一同は新たにする。

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