第587話 今できる事、それは……

空弧の視線の先には先程の叫び通り兵器が次々と湧いて出てくる場所があった、これまでのパターンから考えると恐らくそこが出現口なのだろう。それを裏付けるかのように魔神族部隊は一目散にそちらに向かっていく。


「魔神族部隊が全員で何処かに向かっていくぜ、それにさっきの奴の発言……」

「ええ、どうやら出現口を突き止めたようね、私達も向かうわよ」


モイスがコンスタリオに問いかけるとコンスタリオも同意し、そのまま魔神族部隊の後を追う様に兵器を退けつつ向かっていく、だがコンスタリオの内心にはある引っ掛かりがあった、先程の空弧の言葉が自分達にも向けられている様な、そんな気がしたのである。

だが今はそんな事を気にしている余裕等なかった、一刻も早く兵器を食い止める事こそが最優先事項だったからである。

目標地点に先行して到着した空弧は


「弧妖術……深緑の輪廻!!」


と言ってその地点に青々とした葉の竜巻を巻き起こし、その風に兵器を巻き込んで兵器を一掃する。そしてその下にある魔方陣を剥き出しにするとそこから兵器が現れるのを明確に肉眼で確認する。


「やはりあれが兵器の出現通路になっているのね……」


其れを確認した空弧はそのまま何処かへと連絡を入れる。その直後


「隊長、あれを見て下さい!!上空より強烈な妖術反応が!!」


ト言うシレットの大声が聞こえ、その言葉に従ってモイスとコンスタリオが空に目をやるとそこにはシレットの言う通り巨大な妖術の印が下にある魔方陣を狙うかのように出現し、且つ徐々に下に降りて来ていた。


「あれは、この前の火口の時と同じ……だとすると、あの火口の下にもあれと同じものが?」


コンスタリオはそういうと下にある魔方陣に目をやる、そしてそこから導き出される結論はやや信じ難い物であった、魔方陣を用いるのが人族である以上、兵器の裏側に人族が絡んでいると言う事になってしまうからだ。


「あの妖術の印は恐らくあの魔方陣を破壊する為の物ね……二人共、あの妖術の印の到達を援護するわよ!!」

「了解!!」


コンスタリオの指示に対し、モイスとシレットは特に疑問や反論を差し挟む事無く続いていく、それは決してコンスタリオに盲従している訳ではない、この状況においてはそうするのが最も最善の策であると言う事が分かっているからこそである。

其れを決めたコンスタリオ小隊が魔神族部隊に協力するのに最早躊躇いは無かった、魔神族部隊に近付く兵器を片っ端から蹴散らしていく。

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