第578話 父の真意

皮肉を言いながらも星峰は淡々とデータを調べ続け、その記録を媒体に落としていく。


「やはりこの施設も先史遺産の技術をベースにブントが建設した物ね。建設時期は少なくとも今から数十年前、那智街が建設される際にどさくさに紛れて作られたみたい」

「なら、この街そのものが元々ブントの……」

「どうやらその様ね、ただ、それがどうして反ブント側に……」


データを見ながら解説する星峰に対し、八咫がふと疑問を口にする。

どうやらそれが出来る程度には心を保っていられる様だ、だがその言葉に続き、星峰も疑問を口にする。すると天之御が


「……そうか……だから父はこの那智街を重要視していたんだ!!」


と何かを察した大声を張り上げる。その声の大きさはその場に居た全員が思わず天之御の方を振り向かずにはいられなくなる程だった。


「先代魔王様が那智街を重要視していたって……どういう事なんです?殿下」


空弧がその場に居た全員の気持ちを代弁するかの様な質問を投げかけると天之御は


「父は生前、この那智街の人事に対しては特に神経を使っていたんだ。まあ、傍から見ていてそう見えただけっていえばそうなんだけどね。僕にも詳細は教えられなかった、だけど那智街が開戦当初から魔神族側であることを踏まえると……」

「先代魔王様は何らかの理由でこの施設の事を知っていたか、或いは知らずともブントの関わり方からこの街に何かあると感付いていた……

だからブント関係者を少しずつこの街から遠ざけた、そういう事ですか?」

「はっきりと断定する事は出来ない、でも父がブントの事を知っていた事を踏まえるとその可能性は十分考えられるよ」


と空弧の質問、疑問に対し明確な回答を返す。


「何れにしてもこの施設がある限りこの那智街が今後も狙われ続けるリスクは常にあるわね、でもだからと言って直ぐに解体出来る様な規模でもない。

当面は那智街の防衛部隊にもこの事を伝えて警戒を強化してもらうしかないわね」


星峰の発言は現時点で可能な最大の対処法を示していた、その事を聴いた天之御は携帯端末を手に持ち


「既に連絡は入れてあるよ、司令も今回の襲撃については事態を重く見てる。

直ぐにここに部隊を派遣してくれるって。それを確認した後ここから離れるよ。

次なる調査対象を調べ、此れ以上那智街を危険に晒さない為にもね」


と伝える。

其れを聞いた他の面々は黙って首を縦に振り、それに同意した事を無言で証明する。そして程無くして那智街の防衛部隊が施設内部に入ってくる。

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